安定感抜群! 狼雅 師匠の元大関・雅山に関して 印象に残った現役最後の相撲

 話はここで終わりではない。印象に残ったのが最後の取組となった千秋楽の鬼嵐戦である。雅山が土俵に上がると館内から大きな拍手が上がった。復帰を目指すなら休場しているはずであり、幕下陥落が決定的にも関わらず相撲を取ることの意味は館内のファンもよく分かっている。相撲はモロ手から押し込むもなかなか押し込めず、鬼嵐に右へ左へと回り込まれた。そしていなしを見せるも押し込めていないので決まらない。それでも懸命に押し込むと最後は押し倒しで勝利し、白星で終えた。体の衰えは否めず、それは語る部分ではない。それよりも気力が全く衰えていないのには驚かされた。仮に体が動いていればまだまだ相撲を取っていたような気がする。そして今振り返ると突き放してからの左右のいなしが武器であり、前に出る相撲ではなかったのが長続きできた要因である。また上体の柔らかさも後押ししていた感じがする。

 そしてもっと大関として見れば、豪栄道(現・武隈親方)とは対照的な相撲人生だったと私は思っている。豪栄道は関脇を長く務めた後大関に上がり、大関の地位を長年守ったもののカド番と勝ち越しを繰り返すなど苦しい土俵が続いた。しかし大関の地位に身を捧げ、関脇に陥落することなく引退した。一方雅山はすんなり大関に上がったもののあっさりと大関から陥落した。しかし陥落後は粘り強く土俵を務め、大関復帰まであと一歩のところまで駒を進めた。大関に復帰できなかったのは残念だが、全体として見れば精一杯力を出し切れたのではないだろうか。

続く