2025年9月場所個別評価 正代
今場所は東前頭11枚目だったが10勝5敗の好成績だった。前半戦は2日目は御嶽海に敗れたもののそれ以外は白星を並べ、7勝1敗で折り返した。そして後半戦は9日目は翔猿を押し出して勝ち越しを決めた。その後10日目は隆の勝に押し出されて2敗に後退した。しかし11日目は新小結の安青錦との2敗対決を制し、優勝争いに生き残った。翌日からは3連敗し、優勝争いからは脱落したものの、久しぶりに存在感を示した。
内容に関しては相撲の安定感というよりも体が良く動いており、動きの良さで白星を挙げていた。初日の美ノ海戦は当たってすぐに左前廻しを取られたものの振りほどいた。そして再度左前廻しを取られて寄られたものの右下手を取って残した。その後美ノ海の呼び込むような左上手出し投げについて行って寄り切った。相手得意の形になっても自分の形に持ち込めており、相撲に粘りがあった。9日目の翔猿戦は翔猿に懐に入らせず、左右から引っ張り込むと翔猿の右を抱えて小手に振った。そして翔猿が右を抜いて左へ回り込もうとしたものの右をのぞかせると豪快に押し出した。抱え込むという部分では照ノ富士のような相撲を取った印象がある。抱えて動きを止めたことが勝因である。
そして素晴らしかったのが11日目の安青錦戦である。当たって安青錦の右のど輪を左へ動いて力を逃した。その後左から引っ張り込むと右をのぞかせて安青錦の上体を起こして寄り詰め、体を預けた。この内容は正代の技能相撲である。安青錦としては右のど輪で正代の上体を起こした後で左を深く差し、懐に入るというプランだったと思う。しかし安青錦の攻めを見越してのど輪を少し左へ動いた後あてがって外した。これが最大の勝因である。また差して上体を起こす力は角界でもトップクラスであり、こうなってしまっては安青錦はどうしようもない。それにしても安青錦の上体が起きることは滅多になく、流石は元大関である。そして安青錦戦の攻め方は安青錦攻略のヒントになりそうだ。
終盤の3連敗に関してはスタミナ切れといった印象が強い。33歳のベテランというのもあるが、初日から激しい攻防のある相撲を取っており、ベテランでなくても疲れが出ておかしくない。
来場所はご当所の九州場所であり、いい流れで場所が迎えられそうだ。去年は三役復帰の場所だったが見せ場なく大敗に終わっている。ということで今年は一つでも多く勝って地元九州のファンを喜ばせて欲しい。
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