2022年3月場所個別評価 錦木

 10場所ぶりに幕内に復帰したが9勝6敗で勝ち越した。3連勝スタートを切り、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は10日目に7勝目を挙げたが翌日から連敗し、勝ち越しを前に足踏みした。しかし13日目は妙義龍を物言いの末小手投げで破り、勝ち越しを決めた。千秋楽の若元春戦は勝てば二桁勝利だったが上手投げで敗れ、大勝ちとはいかなかった。

 錦木は長らく幕内に定着していたが、一昨年の9月場所に十両に転落。そして十両でも負け越しが続き、幕下転落一歩手前まで追い詰められた。しかし何とか踏み止まり、3場所連続勝ち越しで帰り入幕を決めた。

 内容に関しては持ち味である重い腰を活かした粘り強い相撲で白星を挙げていた。3日目の一山本戦は立ち合いから一方的に攻められ、防戦一方だったが二本差すと形勢が逆転し、一気に押し出した。7日目の碧山戦は相手のかち上げからの突き押しに全く動じず、逆に一気に押し出した。そして勝ち越しを決めた妙義龍戦は立ち合いの攻防から二本差され、一気に前に出られた。しかし錦木は土俵際で左から網打ち気味の小手投げを打ち、物言いが付いた。軍配は妙義龍に上がったが妙義龍の体が落ちるのが僅かに早く、軍配差し違いで錦木の勝ちとなった。いずれも体の動きが良く、以前の錦木に戻ったような相撲内容だった。

 5月場所は西前頭10枚目という番付となったが再度の勝ち越しを期待したい。年齢は31歳だがコツコツと稽古をするタイプの力士であり、まだまだ活躍できる。そして今場所のような相撲が取れれば再度の幕内定着も十分可能である。派手さはないが地力を持っている力士なので今後もしぶとい相撲で館内を沸かせてほしい。