2022年3月場所個別評価 逸ノ城

 今場所は9勝6敗という成績だった。前半戦は上位力士との対戦が多かったが二大関を破り、5勝3敗で折り返した。そして後半戦は10日目から連勝し、12日目に勝ち越しを決めた。しかし終盤は連敗し、二桁勝利とはいかなかった。

 内容に関しては逸ノ城らしくないと言っては失礼だが、相手に力を発揮させない厳しい相撲を取っていた。やはり好内容だったのは大関を破った相撲である。2日目の貴景勝戦は張り差しから四つに組み止めて寄り切った。相手の頭に全くなかったという意味でも張り差しが非常に効果的だった。作戦勝ちである。3日目の正代戦はどちらが大関か分からないくらい自信を持って相撲を取っていた。立ち合いから右を差すと胸を合わせて徐々に体勢を作った。そして左上手を取るとじわじわと寄り、そのまま寄り切った。これで対正代戦は連勝であり、トータルでは12勝4敗と圧倒的にリードしている。また大関戦以外も立ち合いで当たり負けするような相撲は格段に減った。そして前に出る相撲が取れており、今後も白星をコンスタントに挙げられそうな内容だったと思う。

 一方課題としては長い相撲での対処の仕方が挙げられる。7日目の霧馬山戦、9日目の若隆景戦はいずれも長い相撲となったが勝ちに結び付けることができなかった。体重が200キロを超す巨漢力士なのでもう少し何とかしたいところである。同じく大型力士でも高安は長い相撲を得意としており、徐々に有利な体勢を作っていく技量を持っている。逸ノ城が器用なタイプではないのは分かるが、高安の相撲は参考になると思うので研究するのも悪くない。また千秋楽の翔猿戦は押し合いの攻防から懐に入られ、右を深く差された。そして最後は寄り切られたが、簡単に懐に入られているのが良くない。懐に入れないような相撲を取る必要がある。このように相手に好きなように相撲を取られる内容が何番か見られるので相手に力を出させない相撲を取って欲しいところだ。

 5月場所は西前頭筆頭という番付となったが同部屋の力士にPCR検査の陽性反応があり、再検査したところ新型コロナウイルスに感染していたことが分かった。そして隔離期間が場所初日にかかってしまうため、休場となった。残念だがこれは仕方がない。大型力士なので体を休めることもできる上に番付も下がらないのでプラスに考えたい。あとは1月場所で休場した高安のように時間を有効に使いたい。私としては体をリフレッシュした状態で7月場所を迎えてほしい。