2025年7月場所個別評価 草野
今場所は東前頭14枚目であり、新入幕の場所だったが11勝4敗の好成績で敢闘賞と技能賞のダブル受賞となった。初日から白星を重ね、前半戦はトップタイの7勝1敗で折り返した。そして後半戦は9日目は隆の勝に押し出され、2敗目となった。しかし10日目は宇良を送り出して勝ち越しを決めた。その後12日目からは上位力士にぶつけられた。そして14日目は安青錦を寄り切り、安青錦をトップの座から引きずろ降ろした。また安青錦の初優勝を阻止する結果になった。千秋楽まで優勝争いに絡んでの11勝は立派である。
さて草野を紹介したい。草野は熊本県宇土市出身で伊勢ヶ浜部屋所属であり、年齢は24歳である。また身長183センチ、体重151キロであり、右四つ、寄りを得意としている。日大では4年次に学生横綱となっている。そして卒業後は宮城野部屋に入門予定だったが、入門直前に宮城野部屋が閉鎖されたため、転属先となった伊勢ヶ浜部屋に入門した。その後2024年5月場所に幕下最下位(60枚目)格付け出しで初土俵を踏んだ。
内容に関しては右四つに組んでの速攻相撲で白星を挙げていた。ただ2場所連続で十両優勝を果たしての入幕であり、この活躍は想像できた。そして前半戦は7勝1敗であり、平幕下位の力士相手には力の違いを見せつけた。凄かったのはやはり14日目の安青錦戦である。当たって突き起こし、突き返されたが左上手を取り、右を差した。そしてここからの攻めが速かった。すぐさま左からの出し投げで安青錦のバランスを崩すと右を差して腕を返し、一気に寄り切った。師匠からは「止まるな」と言われていたようだが、その言葉通りの相撲を取った。また連続攻撃が持ち味であり、誰にでもできることではない。非凡な相撲センスに加えて卓越した技術と高い身体能力があってこそである。また体が柔らかいので守りの相撲も取れる。才能の塊であり、新たなスター誕生と言える。
その一方で厳しく言えば負けた相撲は課題が出た印象がある。3日目の琴勝峰戦は右四つに組み止めたものの左上手投げで決められず、こらえた琴勝峰に寄り切られた。9日目の隆の勝戦は当たり負けし、右のど輪から一気に押し出された。12日目の若隆景戦は右四つに組み合ったものの若隆景の理詰めの攻めに何もできなかった。そして千秋楽の高安戦は細かく突き立てられての完敗ということで、やはり動きを止められると苦しくなる。その部分は豊昇龍と同じである。馬力を付けることと動きを止められないようにすることが今後の課題である。
来場所は平幕中位となり、まだ上位力士と当たる番付ではないので二桁勝利は勿論、初優勝まで期待できそうだ。あとは上位力士の中に入ると体が小さい方になるのでこれまで以上に動き回ることを心掛けたい。
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