2025年5月場所個別評価 英乃海

 今場所は東十両2枚目だったが9勝6敗で勝ち越した。前半戦は初日は先場所新十両優勝の草野を破り好スタートを切った。その後4日目から4連勝し、5勝3敗で折り返した。そして後半戦は13日目に勝ち越しを決めると千秋楽は東白龍を寄り切り、再入幕に向けて大きな9勝目を挙げた。

 これで2場所連続勝ち越しとなったが、今年1月から体脂肪と筋肉量の計測を始め、糖質制限をしながらの肉体改造に着手したようである。その結果年始から体脂肪率を3,5%落としつつ、7.5キロの体重の増量に成功したらしい。「体も動いていて、3月より状態もいい」と手応えを口にしていた。

 内容に関しては右四つの相撲と押し相撲で白星を挙げていた。圧巻はやはり初日の草野戦である。頭からぶつかると草野の右差しを許さず、押し合いからすぐに右をのぞかせた。そして左を差すと強烈な右おっつけを見せ、一気に押し出した。本人が言うように会心の相撲だった。草野得意の右差しを許さず自ら力を発揮する一方、相手に力を出させないという内容であり、英乃海らしい取り口だった。

 また5日目の白熊戦は当たってすぐに二本差し、抱えられて寄られたものの残すと最後は右からの掬い投げで転がした。右四つ得意だが、やはり二本差す相撲が理想である。12日目の友風戦は友風に右のど輪で土俵際まで押し込まれた後叩かれた。しかし叩きに落ちず、踏ん張った流れで押し出した。このあたりは肉体改造の成果と言えそうだ。

 来場所は3年半ぶりとなる再入幕が濃厚である。その間は幕下に落ち、引退を考えたこともあった。また十両の土俵は草野だけでなく若碇や琴栄峰など若手力士が台頭してきており、その中での9勝は立派である。35歳のベテランではあるものの、身体能力が高い上に技量も持っている。あとは怪我だけには注意して欲しい。勿論勝ち越しを期待したい。