令和の怪物! 伯桜鵬 新入幕場所の北勝富士戦

 そして強く印象に残っているのが2023年7月場所14日目の北勝富士戦である。新入幕の場所だったが13日目までで3敗を守っており、ここまで2敗で優勝争いで単独先頭に立っていた北勝富士戦が組まれた。北勝富士は勝てば初優勝に近づく大事な一番である。相撲は1分近くの熱戦となった。当たってすぐに左を差して下手を取り、北勝富士の動きを止めた。しかし北勝富士は押し相撲が得意だが廻しを取っても相撲が取れる。また今場所好調であり、体も伯桜鵬より一回り大きい。よって北勝富士が右からおっつけて圧力を掛ける。一方の伯桜鵬は下手は引いているものの、上体が少しずつ起きてきた。流れ的には北勝富士が有利な体勢を作っているように見えた。そして伯桜鵬がどう動くかに注目していた。すると伯桜鵬は北勝富士の左下手を切ると同時に自らの左下手も放し、体が離れた。北勝富士は離れたここがチャンスと言わんばかりに押して一気に前に出た。すると伯桜鵬は土俵際で左から突き落としを見せ、弓なりになりながらも残した。物言いが付く際どい一番となったが軍配通り伯桜鵬の勝ちとなった。凄かった点は二つある。一つは当たってすぐに左を差し、北勝富士の動きを止めたことである。北勝富士は押し相撲が得意であり、やはり動いてこその力士である。長い相撲にはなったものの、動きを止めたことが勝因と言える。そしてもう一つは自ら動いて勝機を見出したことである。北勝富士の左下手を切って自ら勝負に出た。当時19歳である。経験豊富な北勝富士相手に先に仕掛けられるものではない。粘るのが精一杯となり、そのまま負けてしまってもおかしくないところである。しかし自ら仕掛け、勝てる局面を作り出した。そして際どい形にはなったものの白星を手に入れた。動けるだけでも凄いのに勝てるというのがやはり只者ではない。令和の怪物と言われるだけのことはある。それを実感できる一番だった。

続く