2025年3月場所個別評価 嘉陽
今場所は東十両2枚目だったが9勝6敗という成績だった。前半戦は3勝5敗と黒星先行で折り返した。しかし後半戦は連勝し、13日目はここまで全勝の草野に土を付けるとともに勝ち越しを決めた。翌14日目は白鷹山を寄り切って9勝目を挙げ、来場所の新入幕をほぼ確実とした。
内容に関しては押し相撲と懐に入る相撲に加えて横への動きの速さで白星を挙げていた。課題が出たのが3日目の栃大海戦である。立ち合いで右に動き、押し合いとなったがまともに引いたところを一気に押し出された。しかも相手を呼び込むような引き技であり、自滅と言われても仕方がない。十両に上がってからは減ったが幕下以下の時は時々悪癖を見せており、注意したい。また下からあてがうなどして我慢して欲しいところだ。
一方素晴らしかったのが10日目の琴栄峰戦と13日目の草野戦である。琴栄峰戦はお互い見ながら立った後は琴栄峰が左前廻しを取って寄ったが右へ回り込んで残すと今度は琴栄峰の押しに対して左へ回り込んだ。その後は互いに見ながらの押し合いとなったが琴栄峰が左を差すと土俵際まで押し込んだ。しかし上体をのけぞらせながらも右へ回り込むと体を入れ替えて押し出した。右へ左へと機敏に動ける持ち味を発揮した。また状態の柔らかさも逆転勝ちにつながった要因である。草野戦は草野の右差しを封じ、草野が強引に前に出てきたところを右腕を手繰り、左へ回り込んで後ろに回り送り出した。横への動きだけでなく手繰るのも上手く、持ち味が出た一番だった。
来場所は新入幕となるが勝ち越しを期待したい。動きを止められたら苦しくなるので止まらない相撲を取りたい。ただ回り込むことだけが得意の力士ではなく、気を見て懐に入るなど駆け引きが上手い力士でもある。ということで全く通用しないということはないと見ている。横への動きが行かせる形に持ち込めれば幕内でも面白い存在になりそうだ。
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