2024年11月場所個別評価 玉鷲

 今場所は東前頭11枚目だったが8勝7敗で勝ち越した。7日目は翠富士を押し倒しで破り、40歳の誕生日を白星で飾った。翌日からは連敗し、4勝5敗と黒星が先行した。しかし10日目からは連勝し、13日目は新入幕の朝紅龍を押し出しで破り、5場所ぶりの勝ち越しを決めた。また昭和以降4人目となる40代での幕内勝ち越しとなった。

 内容に関しては突き押し相撲に力強さがあった。7日目の翠富士戦は翠富士が立ち合いで左に動いたが対応して突き立てた。その後右のど輪を入れるとねじ伏せるように押し倒した。いくら軽量の翠富士が相手とはいえ、片手で押し倒しており、まだまだ健在である。そして12日目からは獅司、朝紅龍といずれも新入幕との一番となったが一方的な内容で勝つと同時に相手に自分の相撲を取らせなかった。この内容なら当分は幕内の地位を守れそうである。

 そして個人的に印象に残ったのが千秋楽の尊富士戦である。相撲は尊富士に二本差された後、最後は突き落とされたが、土俵下に転落後尊富士が土俵から下り、手を差し伸べた。しかし玉鷲は応じず、そして尊富士の顔も見ずに土俵に戻った。最近は取組後は手を差し伸べる力士が増えたが、玉鷲は応じることもなければ手を差し伸べることもない。本人というよりも伝統ある片男波部屋の厳しい姿勢、つまり土俵は戦場であるという教えが伝わっているようである。個人的にはこういう玉鷲の姿勢が好きである。気力も充実しており、さすがは鉄人といったところだ。

 来場所は再度の勝ち越しを期待したい。そして詳しくは把握していないが、今後も場所が来るたびに記録の話題が出てきそうである。本人はそれが目的ではないかもしれないが、それだけ凄い事だというのは事実である。20代の頃は幕内と十両を往復し、苦労していた記憶があるので、この年齢になっての活躍は嬉しい限りである。三役復帰が目標のようだが、まずは役力士と対戦できる番付に戻したい。