2022年11月場所個別評価 琴ノ若

 今場所は西前頭筆頭という番付だったが9勝6敗という成績だった。地位的に初日から役力士との対戦が続いたので3連敗スタートは仕方がない。それでも4日目から5連勝し、5勝3敗で前半戦を折り返した。そして後半戦も白星を挙げ、13日目に勝ち越しを決めた。千秋楽は三役昇進に向けて大事な一番だったが竜電を寄り切りで破り、価値ある9勝目を挙げた。

 内容に関しては右四つの相撲と押し相撲が多かったが寄り切りで勝った相撲は千秋楽の一番だけであり、四つには組むものの廻しは取らない相撲が多かった印象である。惜しかったのが初日の豊昇龍戦である。立ち合いから右を差し、一気に前に出たものの土俵際で突き落とされた。取り直しになってもおかしくない一番だった。一方もう少し考えて欲しかったのが9日目の霧馬山戦である。突き合いから右を差したが相手得意の左上手を取られ、最後は上手投げで転がされた。突き合っている時点で相手に左上手を取られないような動きが必要だったと思う。相撲を観た限りではその警戒心が欠けていたように見える。

 また今場所は馬力だけでなく、相撲の上手さを見せた。11日目の逸ノ城戦は得意の右四つに組み止めたものの、相手に左上手を取られ、長い相撲になった。しかし右の腰を振って相手の廻しを切る動きを見せると左から出し投げを打ち、そのまま送り出した。千秋楽の竜電戦は相手に左上手を取られた上に頭を付けられ、苦しい形になったかに見えた。しかし左おっつけで前に出た後で右下手投げを打つと同時に左を巻き替え、頭を付けて一気に寄り切った。やはり自ら体勢を有利に持っていく技を持っている。そして体が柔らかい上に器用である。今後も琴ノ若の武器となりそうだ。

 来場所は晴れて小結となり、史上6組目の親子三役となった。一つの区切りではあるが、恵まれた体がある上に年齢は25歳と若いのでここで満足してもらっては困る。まずは勝ち越し、そして二桁勝って大関昇進への道を歩んで欲しい。父の最高位である関脇で終わるような力士ではないと私は思っている。そしてもう一つ求めたいのが部屋の琴勝峰と琴恵光に稽古を付けることである。両力士ともに現在は上位力士と対戦できる地位ではない。二人が番付を上げれば琴ノ若を援護射撃する日が来るかもしれない。自身だけでなく、部屋の力士の力を引き上げる役割にも期待したい。