2023年9月場所を振り返って 優勝争い その9

 そして千秋楽。熱海富士は朝乃山に勝てば初優勝が決まる。また朝乃山は前日は正代に完敗という内容で負けており、本調子には戻っていない。相撲は互いに右四つ十分であり、熱海富士にとっては取りにくい相手ではない。がっぷりにならない形で熱海富士が左上手を取れば熱海富士にも勝機は十分あると思っていた。

 相撲は立ち合いから朝乃山が右を差すと左上手は取れなかったものの、おっつける形で一気に寄った。一方熱海富士は土俵際で左上手を取り、投げに行こうとした。しかし朝乃山は右の腰をぶつけるような形で一気に寄り切った。これで熱海富士は4敗となり、優勝争いは決定戦に持ち込まれた。

 勝った朝乃山は昨日とは一転して厳しい相撲を取った。これで9勝目となり、来場所の三役復帰の可能性が出てきた。熱海富士戦ということでいろいろな気持ちがあったようだが、9勝目を挙げることだけに集中し、自分の相撲を取った。元大関として、引き立て役になったらたまらないという思いもあったかもしれないが、経験者としての意地を見せた。

 一方熱海富士は朝乃山に厳しい相撲を取られてしまってはどうしようもない。観た限りでは硬くなっていた訳ではなく、朝乃山に実力の差を見せつけられた格好となった。ここは気持ちを切り替え、決定戦に臨むしかない。

続く