2023年5月場所個別評価 王鵬

 今場所は西前頭16枚目だったが11勝4敗の好成績だった。白星スタートも2日目からは3連敗し、前半戦は4勝4敗で折り返した。しかし後半戦は連勝し、12日目に勝ち越しを決めると千秋楽は平幕上位に定着している翠富士相手に長い相撲の末引き落としで破り、11勝で場所を終えた。

 内容に関しては押し出しで勝ったのが2番、それ以外の決まり手で前に出て勝った相撲が2番であり、物足りなさが残る。勝った相撲の多くが押し込まれた後の引き技で勝負を付けていた。2日目の水戸龍戦は一方的に押し出されての完敗。そして先場所勝った朝乃山戦も何もできないまま押し出されての黒星だった。また立ち合いの後で押し込めている相撲自体が少なく、相手に攻められてから相撲を取っているという印象である。入幕8場所目であり、幕内に定着したとは思うが、上を目指すとなると課題がたくさんある。まずは立ち合いから踏み込み、一歩でも前に出ることが求められる。

 それでも千秋楽の翠富士戦だけは評価できる。立ち合いから相手を押し込み、左に回り込まれたものの左を差して組み止めた。そして長い相撲となったが翠富士が前に出てきたところを引き落とした。組み止めた後、相手が出てくるのを待っていたようである。肩透かしで来たら前に出る、逆に前に出てきたら落とすという二択に絞ったみたいだ。結果として想定した形となり、我慢したと同時に落ち着いていたと思う。このあたりは幕内の土俵で場数を踏んでおり、強くなってきている部分である。

 7月場所は自己最高位を更新し、西前頭6枚目となったが勝ち越しを目指したい。しかし星勘定よりも目先の結果よりも大事なのは前に出る相撲を一番でも多く取ることである。横への動きも速いが、まずは前に出る圧力があってこその横への動きである。また身長190センチ、体重179キロの立派な体格をしているが全身を上手く活かし切れていない。スケールが大きいので体全体を上手く使えるようになるにはもう少し時間がかかりそうだ。将来が楽しみであることは確かであり、長い目で見てあげたい力士である。