2025年11月場所個別評価 高安

 今場所は8勝7敗で勝ち越した。序盤5日間は4勝1敗と好スタートを切り、前半戦は5勝3敗で折り返した。しかし後半戦は9日目から4連敗し、勝ち越しに向けて後がなくなった。それでも終盤は錦富士、熱海富士、義ノ富士といずれも伊勢ヶ浜部屋所属力士の挑戦を退け、千秋楽に勝ち越しを決めた。

 9月場所後のロンドン公演に参加したが、腰痛持ちということで心配していた。また片道約14時間のフライトであり、対策として自腹でトレーナーを帯同させたようだ。相当な出費だが、こういったところにも涙ぐましい努力が見て取れる。そして場所前は腰痛を発症させ、ほとんど稽古ができないまま本場所を迎えていた。

 内容に関してはかち上げからの押し相撲と左四つに組む相撲で白星を挙げていた。勝った相撲に関して印象に残ったのが3日目の琴櫻戦と千秋楽の義ノ富士戦である。琴櫻戦はかち上げから左を差そうとするも琴櫻が右からおっつけ、動きが止まった。その後琴櫻が高安の左を手繰った後は押し合いの攻防となったが高安が機を見て左を差し、有利な体勢を作った。そして左下手を取った後琴櫻の左下手を切ると右内無双が鮮やかに決まり、琴櫻を這わせた。左さえ差せれば上位力士が相手でも通用するところを見せた。義ノ富士戦は勝ち越しが懸かっており、三役入れ替えを匂わせる一番だった。相撲は高安がかち上げた後は激しい突っ張り合いとなった。その後義ノ富士が右上手を取ろうとするも許さず、逆に左下手を取って義ノ富士の動きを止めた。その後右からおっつけて寄り詰め、最後は左下手を離して押し倒した。勝ち越すとともに義ノ富士の新三役に待ったをかけた。当分は若手力士の壁となって立ちはだかりそうである。

 負けた相撲に関しても見せ場十分だった。7日目の安青錦戦はかち上げから突っ張った後右を差し、安青錦得意の左差しを許さなかった。その後二本差して前に出るも安青錦が左へ回り込んで凌いだ。そして体が離れて押し合いとなったが安青錦が右へいなすと左を深く差した。高安も右上手を取り、投げに行ったものの左からの切り返しでついて行かれ、最後は寄り切られた。負けはしたものの簡単に左を差されなかったあたりは流石である。12日目の豊昇龍戦はかち上げから右上手を取られそうになったものの許さず、張り手を交えた激しい突っ張り合いの攻防となった。その後左を差したもののすぐに巻き替えられ、最後は左から起こされて押し倒された。豊昇龍はダメ押しで審判長から厳重注意を受けたが、高安が嫌がられる相撲を取ったことの裏返しだと思っている。

 場所後の冬巡業を休場しているのが気掛かりだが、来場所は3年ぶりの関脇復帰となる。そして二桁勝って大関復帰への起点を作りたい。体調次第ではあるものの力は衰えておらず、調整の仕方が鍵となりそうである。