2025年9月場所個別評価 伯桜鵬

 今場所は東前頭2枚目であり、自己最高位となったが8勝7敗で勝ち越し、初の殊勲賞を受賞した。初日は大関獲りの若隆景を押し出し、好スタートを切った。そして4日目は大の里を突き落とし、2場所連続で金星を獲得した。その後7日目は霧島に勝ったものの極められた際に右上腕を痛めた。翌日からも白星を伸ばし、影響なしかと思われたが10日目から3連敗し、星が五分となった。その後7勝7敗で千秋楽を迎えたが千秋楽は宇良に勝ち、勝ち越しと三賞受賞を決めた。

 内容に関しては左四つの相撲と押し相撲で白星を挙げていた。やはり素晴らしかったのは若隆景戦と大の里戦である。若隆景戦は頭からぶちかまして左を差すと右は突き放し、左へ回り込もうとした若隆景を一気に押し出した。若隆景はスロースターターであり、ひょっとしたら本調子ではなかったのかもしれない。しかしそれを差し引いても大関獲りの力士相手に立ち合い勝ちした内容は評価できる。そして自身になったはずである。大の里戦は大の里の強烈な突き放しを下からあてがうと二本差して寄り立てた。しかし大の里が左へ回り込んで左上手を探るもすぐさま振りほどいて突き放した。その後大の里が左ハズで押し込んだところを上体をのけぞらせながらも右からの突き落としで大の里を裏返しにした。取組後本人は「横綱の馬力、圧力を受けずに逃して、右は差させない、自分は絶対に攻め続ける、というテーマを持っていきました」と語っている。そしてテーマを持った上で強い気持ちで臨んだ結果、金星を手に入れたという印象である。最後は押し込まれており、ギリギリの内容ではあったものの勝ったことに意義がある。また私的には大の里の強烈なもろ手を凌いだことを高く評価したい。

 そして触れない訳にはいかないのが霧島戦で右腕を痛めた後の相撲である。その後も右を使って相撲は取っていたものの、やはり影響があったのだと思う。右腕のテーピングの範囲が広くなっていったのがそれを物語っている。特に11日目の王鵬戦は熱戦の末の黒星であり、心が折れてもおかしくない。しかし気持ちを切り替え、勝ち越しに結び付けたのは立派である。宇良戦は張って宇良の動きを止めたのが勝因だが作戦だったようであり、やはりしたたかさを持っている。また千秋楽にそれだけ考えられるというのは、15日間戦えるスタミナがついてきた証拠である。

 来場所は状況的に新三役はお預けとなり、東前頭筆頭あたりが予想される。腕を痛めている上に九州場所までは間隔が短いので体調を整えることを優先したい。そして今度も役力士との対戦が多くなる前半戦が鍵となるので一人でも多く倒して後半戦を迎えたい。勝ち越して三役昇進となるか注目である。