2025年9月場所個別評価 安青錦
今場所は新小結となり、史上最速の初土俵から所要12場所での新三役となったが11勝4敗の好成績で2場所連続2度目の技能賞を受賞した。また新入幕から4場所連続二桁勝利は戦後初となった。そして同じく新入幕から4場所連続三賞受賞は大の里の5場所連続に次ぐ記録となった。
初日は大の里に敗れたものの2日目からは白星を重ね、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は10日目に伯桜鵬を寄り切り、勝ち越しを決めた。その後12日目は豊昇龍を切り返しで破り、ここまで全勝の横綱に土をつけた。終盤も白星を伸ばし、11勝で場所を終えた。
内容に関しては懐に入っての押し相撲と四つ相撲で白星を挙げていた。感心したのは初日の大の里戦以外は突き起こされなかった点である。着実に力を付けてきており、私的にはこの部分だけで満点をあげたいくらいである。
相撲に関しては勝った相撲はどれも素晴らしかったのだが、その中で3番挙げたい。5日目の霧島戦は霧島の突っ張りをこらえると左四つに組み、互いに下手を取って上手が取れない体勢となった。その後安青錦が右からおっつけながら寄り立てたが霧島がこらえた。その直後に霧島が右巻き替えに来た瞬間、安青錦は左上手出し投げで崩して送り出した。寄るのではなく、出し投げを打つあたりがまさに技能相撲である。6日目の高安戦は当たってすぐに高安に細かい突っ張りで突き立てられた。しかし低い体勢のまま我慢して凌ぐと高安が引いたところを左を差して寄り切った。まさに先輩力士の洗礼を受けるような内容だった。そして突っ張りが何発も顔面に入っており、おそらく口の中を切っていると思う。しかし「変なことをせずに我慢した」のコメントが頼もしい。技というよりも気持ちの強さを象徴した一番だった。そして12日目の豊昇龍戦である。突き立てられるも上体を起こさず、引きに乗じて左下手を深く取った。その後豊昇龍が右小手投げに出たものの、豊昇龍の右膝をロックする形で動きを止めると左からの切り返しで豊昇龍を裏返しにした。まずは体を寄せるスピードの速さである。引きに乗じて下手を取ったが、普通はこうはいかない。努力ではなく才能である。そして足技である。また単に足技を出すのではなく、豊昇龍の投げ技を止めた後で繰り出すあたりが何とも心憎い。また今場所一番盛り上がった一番と言っても過言ではない。
一方負けた相撲に関しては大の里の出足を止めるのはまだ厳しく、勝つには少し時間がかかりそうだ。他の3番は背の高い力士に差された後腕を返されて上体を起こされており、大きい相撲を取られた印象がある。前に出る圧力に加えて増量が課題だが、まだ入幕4場所目ということで気にする部分ではない。
来場所は現在一大関ということもあり、ハイレベルな成績を残せば場所後の大関昇進の可能性も出てきた。そして大関昇進に向けては二桁勝利が目標となるが、今場所の内容なら二桁は問題なさそうである。また新関脇となるが、関脇という言葉が吹き飛ぶくらいの勢いであり、大関候補筆頭である。よってこのままの流れで大関に昇進できるか注目したい。
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