2025年9月場所個別評価 琴櫻

 今場所は9勝5敗1休という成績だった。連勝スタートは優勝した昨年11月場所以来となった。そして序盤5日間は4勝1敗であり、優勝争いに加わる可能性もあった。しかし7日目から連敗し、優勝争いから大きく後退した。後半戦は11日目に勝ち越しを決めると13日目は1敗の豊昇龍を一気に寄り切り、存在感を見せた。しかしこの相撲で右膝を痛め、翌日から休場して場所を終えた。

 内容に関してはいつもより立ち合いの踏み込みが鋭く、それが序盤の好調の要因と言える。また踏み込んでいればその後反撃されたとしても引き技などで対処できる。タラ、レバは勝負事では禁物だが、豊昇龍戦で怪我をしていなければ、おそらく二桁勝てたと思う。少なくとも今年に入ってからは内容が一番良かったことは確かである。

 やはり好内容だったのは豊昇龍戦である。鋭く当たって二本差すと豊昇龍が左へ回り込もうとするのを許さず、一方的に寄り切った。確かに豊昇龍は腰痛が原因で思うような立ち合いができなかったのは事実である。しかしそれを差し引いても立ち合いの当たりが厳しく、会心の一番だったと言える。今場所を見てもまだ立ち合いの踏み込みの安定感に欠けるので、今後はその精度を高めたい。

 一方負けた相撲に関してはやはり安青錦戦が気になる。右を差しに行ったものの左からおっつけられ、右で突き起こされた。そして思わず引いたところで再度突き起こされて押し出された。これで対安青錦戦は連敗となった。上体を起こせなかったことが敗因だが、相手に離れる相撲を取られ、結果として安青錦の術中にはまった。勿論安青錦の上体を起こせればそれが一番だが、安青錦の相撲には自在性があり、研究することも求められる。またこの相撲では左をほとんど使えておらず、左の使い方も課題である。内容的にも今後連敗が続くことも考えられ、豊昇龍同様、安青錦対策が不可欠である。

 さて右膝の回復が思わしくないということで10月15日からのロンドン公演を休場した。ロンドンに行きたかったかもしれないが責任のある地位であり、後先を考えればこの判断は妥当である。ただ無理をしなければ11月場所には間に合いそうなので、まずは少しでも体調を上向かせてから福岡に乗り込みたい。そして今度は最低でも二桁勝利、できれば優勝争いを期待したい。