2022年1月場所個別評価 豊昇龍
今場所は11勝4敗の好成績だった。前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は役力士との対戦もあったが11日目からは全て白星を並べた。幕内での11勝は自己最多となった。
内容に関しては決まり手を見ると投げ技や足技での白星が多いが押し出しと寄り切りでも2番ずつ勝っており、投げ技や足技に頼っているという印象はない。そして先場所はほぼ同じ番付で負け越したが今場所は2桁勝利ということで着実に力を付けてきているのがよく分かる。
8日目の阿炎戦は両手でもろ手突きを封じると右を差して一気に寄り切った。二度は使えない手だと思うが、よく考えた相撲だったと思う。そして凄かったのが14日目の正代戦である。立ち合いで右上手を取るも正代に左を深く差されて寄られると投げの打ち合いとなった。軍配は正代に上がったが物言いが付いた。確かに軍配通り体勢は正代の方が有利である。しかし豊昇龍は手は付かず、顔から地面に落ちた。また投げの打ち合いの時に僅かながら正代の左足を跳ね上げていた。その結果豊昇龍の顔と正代の左膝が付くのが同時となり、取り直しとなった。豊昇龍の勝利への執念で取り直しになったようなものである。額はすりむき、痛々しいほど出血していた。そして取り直しの一番は突き放しにいった。正代に左を差されるも回り込みながら残し、今度は反撃。押し込んで前に出ると左を差し、一気に寄り切った。取組直後は土俵下に落ちた正代をにらみつけていた。このあたりはやはり朝青龍の血を受け継いでいる。また優勝争いには関係ない一番だったが館内は非常に盛り上がった。
来場所は新三役となるかどうかは微妙だが、3場所ぶりの上位総当たりの番付となるのは確かである。まだ平幕上位での勝ち越しはないのでまずは勝ち越したい。それでも上位力士に引けを取らない実力は備わっており、この先が非常に楽しみである。そしてできれば投げ技に頼るのではなく、もう少し前に出る相撲が増えてほしい。
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