2025年7月場所個別評価 琴勝峰

 今場所は東前頭15枚目だったが13勝2敗の好成績で初優勝を果たすと同時に殊勲賞と敢闘賞を受賞した。前半戦は6勝2敗で折り返すと後半戦も白星を伸ばした。10日目に勝ち越しを決めると11日目は隆の勝に勝ち、優勝争いでトップに並んだ。12日目からは上位力士との取組となったが12日目は高安を叩き込んで2敗を守り、トップは安青錦と2人になった。13日目は大の里を上手投げで破る殊勲の星を挙げ、初金星となった。14日目は霧島に勝って2敗を守ったが安青錦が敗れたため、千秋楽を前に単独首位に立った。そして千秋楽は安青錦を突き落としで退け、初優勝を決めるとともに決定戦に持ち込ませなかった。

 内容に関しては右四つの相撲と突き押しで白星を重ねた。また場所前に右太もも裏を痛め、稽古は十分とは言えなかった。テーピングを厳重に施した上で初日から土俵に上がっていた。しかし怪我の功名とはよく言ったものである。太ももに不安があったことで速い相撲を心掛け、それが白星につながっていった。やはり一番大きかったのが13日目の大の里戦である。大の里に当たり負けせず右を差し、左上手を取った。大の里も右下手を取っていたものの、それでも大の里が出てくるところを左上手投げで体を入れ替えた。そして粘る大の里を最後は土俵下に落とした。本人的には願ってもない左上手であり、勝つにはこれしかないという形での初金星となった。初優勝に向けて弾みがついたのは間違いない。そして14日目の安青錦の黒星も大きかった。星一つ差での直接対決となり、精神的にも有利な立場に立てた。また安青錦と違って優勝争いの経験があり、その経験が生きた。勿論プレッシャーで大変だったとは思うが、結果から見ると琴勝峰が優勝するシナリオができていたような気もする。

 そしてやはり弟の琴栄峰の新入幕が刺激になったのは確かである。番付も近く、琴栄峰の相撲を土俵下で見た後土俵に上がることもあればその逆もあった。その意味では危機感が生んだ初優勝でもある。

 来場所は上位力士と対戦する位置に番付を上げるが、試金石の場所となりそうだ。平幕上位での勝ち越しはなく、勝ち越せるかどうかがポイントである。また琴栄峰と番付が離れるので今場所のような気持ちで土俵に立てるかも大事である。潜在能力が高く、今場所の勢いをそのままに三役昇進といきたいところだ。逆に負け越すようだと今場所優勝した意味がなくなり、元の木阿弥となる可能性が高い。ということで本人が今場所以上に危機感を持つだけでなく、師匠も厳しく指導して欲しいと思っている。また来場所好成績を残せば部屋の大関琴櫻の目つきも変わるはずである。来場所活躍するかどうかは本人に限らず、部屋全体にとっても重要かもしれない。