2025年7月場所個別評価 阿炎

 今場所は西前頭2枚目だったが9勝6敗で勝ち越した。前半戦は4日目は豊昇龍を押し出しで破り、5個目の金星となった。また対戦成績でも5連勝とした。前半戦を4勝4敗で折り返すと後半戦はほぼ平幕との取組ということで白星を伸ばし、13日目に勝ち越しを決めた。そして千秋楽は翠富士を押し出し、9勝で場所を終えた。

 内容に関しては叩き込みで3番、引き落としで1番勝っているように引き技で勝つ相撲が多かった。3日目の若隆景戦は1回目の立ち合いで若隆景がつっかけた。そして「1回目で若隆景関の頭が下がっているなと思った。最初は横で攻めると決めていたが、落ちるかなと思った。手を出せたのが良かった」と攻め手を変更した。そして2回目の立ち合いでは突っ込んできた若隆景を両手で受けて叩き込んだ。こういった観察眼も阿炎の持ち味である。相手の動きを読んだ上で冷静に対処できる。また12日目の王鵬戦は左にいなしてからの動きが速く、13日目の隆の勝戦は右のど輪からの機を見ての引き落としが決まった。引くばかりではなく、横への動きの速さも見逃せない。そして負けた相撲も考えながら相撲を取っているのがよく分かる。

 豊昇龍戦はもろ手突きから一気に攻め込んでの快勝だった。豊昇龍は前日の取組で左足親指を痛めていたようであり、やや恵まれた部分はあったものの自分の相撲を取って金星をゲットした。

 来場所は三役復帰の可能性もあるが、前頭筆頭ということになりそうである。一つ言えるのは上位力士の全てにとって嫌な存在になるということである。横綱・大関は勿論、来場所大関獲りの若隆景にとっては特に嫌な存在となりそうだ。また筆頭ということで初日から役力士との対戦が続くので一人でも多くの役力士を倒して後半戦につなげたい。