2025年7月場所個別評価 琴櫻

 今場所は8勝7敗という成績に終わった。序盤は1勝2敗と黒星が先行したものの翌日からは4連勝し、持ち直したかに見えた。しかし8日目から3連敗し、苦しい星勘定になった。その後は懸命の土俵が続き、14日目は平戸海を掬い投げで破って勝ち越しを決めた。

 内容に関しては前に出る圧力が弱く、それが原因で自分の相撲が取れていなかった。気になったのが取組の時間である。勝ち負け関係なく、1分以上かかった相撲が3番あった。また欧勝馬に負けた8日目は55秒、霧島に勝った12日目は40秒かかっており、30秒以上かかった相撲が5番もあった。大関であり、何より勝つことが求められるので時間がかかるのは仕方がない。ただ本来は不利な体勢になっても自ら勝機を見出し、早く勝負を付けるタイプの力士である。しかし今場所は「ミスター1分」と言われた師匠のような長い相撲が目立った。また長い相撲に強かった師匠とは違って長い相撲で強さを発揮する力士ではない。その部分で看板力士としての苦労と苦悩がうかがえた。

 また場所前の稽古ではそれなりに調子がいいものの、本場所に入ると結果が出ないという場所が続いている。そしてその流れにどっぷりと浸かっている印象がある。年下の豊昇龍、大の里に横綱に上がられ、辛い立場に置かれているのが現状である。ちなみに私が琴櫻の立場でも頑張れないと思う。しかし一人大関なので大関不在の事態だけは避けたい。ということで大関としては物足りないものの、勝ち越して大関の座を守っていくことが大事である。そして我慢の土俵が当分続くことになりそうだ。

 おそらく来場所も今場所と同じような結果となりそうだが、大関なので前半戦での取りこぼしを減らし、二桁勝利を挙げて大関としての役割を果たして欲しい。周囲から何と言われようとも、今は大関の座にしがみつくことが重要である。