2025年7月場所を振り返って 優勝争い 10日目まで 玉鷲ー大の里戦

 9日目は1敗の4人のうち霧島、玉鷲、草野の3人が敗れたので一山本が単独トップに立った。そして2敗で大の里、霧島など7人が追う展開となった。

 10日目は一山本は明生を押し倒しで破り、1敗を守った。そして2敗力士は6人勝ったものの、唯一負けたのが大の里であり、横綱が3敗に後退したことで優勝争いが更に分からなくなった。

 大の里は玉鷲との2敗対決だった。相撲は大の里の右差しに対して玉鷲はやや左へ動き、右差し封じに出た。そして大の里は右は差せなかったものの右は抱え、左は差す形で寄り立てた。しかし玉鷲は左へ回り込むと大の里が寄って一気に前に出たところを土俵際で右から突き落とした。昭和以降、40歳8か月での金星は大潮の39歳5か月を85年ぶりに塗り替える最年長記録となった。また初土俵から128場所での金星も、127場所で1位だった大潮と麒麟児を上回った。玉鷲にとっては快挙であり、歴史的瞬間となった。

 確かに凄い事なのだが、今年の3月場所は元大関の霧島に勝っており、相撲内容を見ても驚きまではない。展開ひとつで勝てる可能性はあると思っていた。しかし現実に勝ってしまうあたりが玉鷲の真骨頂である。そして不可能を可能にできる力士である。右からの突き落としは上手くハマった感じはするものの、左から揺さぶっての右への突き落としは理にかなっており、40歳の動きではない。

 一方負けた大の里は前に出ながら右上手を取っており、焦って前に出る必要はなかった。相撲だけを見ればもう少し落ち着いて相撲を取って欲しかったところである。しかし今場所は新横綱の上に5日目から豊昇龍が休場しており、一人横綱という現況なのでそのプレッシャーが焦りを生んだのかもしれない。勝負事にタラレバは禁物だが、豊昇龍がいればもう少し落ち着いて相撲が取れていたかもしれない。いずれにしても優勝に向けては手痛い3敗目となった。

 また単独トップの一山本は西前頭8枚目であり、まだ上位力士とは対戦していない。そして上位力士を倒した実績はあるものの三役には上がれていない。よって確かに調子は良さそうだが、上位力士と対戦して負けることも考えられ、その意味で先を全く見通せない展開となった。

続く