負けん気の塊! 若碇改め藤ノ川 私が観た印象 十両昇進まで

 最初に目に入ってきたのは幕下時代である。元幕内大碇の長男だが、大碇より体が小さく、その部分では父とは比較できなかった。ただ体は小さいものの動きが速い上に技も多彩である。そして小さいながらも頭からぶちかます相撲を取っていた。よって将来性があると見ていた。そして父とそっくりなのは体格ではなく、全身から湧き出でくる負けん気の強いオーラである。表情が厳しい力士は数多くいるが、全身から負けん気が伝わってくる力士はそう多くは見当たらない。表情はさほど険しくはないのだが、その強いオーラに画面越しに圧倒されるくらいである。その意味で小兵ながらも高卒で入門したのは正解だったと思っている。そしてプロの水に合っているのは言うまでもなく、あとはプロの世界でどれだけ結果を残せるかという部分である。

 そして能力は認めるものの、幕下の土俵でしばらく揉まれるものだと思っていた。しかし幕下上位と言われる15枚目以内の番付に入ると5場所連続で勝ち越し、負け越し知らずでの新十両となった。しかもそのいずれもが4勝3敗である。また十両昇進前の3場所は全て7番相撲での勝ち越しであり、ここ一番で勝負強さを見せた。ただ勝負強いだけで勝ち越せるほど幕下上位は甘くない。そして大抵の力士が負け越し、揉まれることになる。それではなぜ負け越さなかったのか?。私にも具体的には分からない。ただ稽古だけでなく、技の引き出しが多かったことが原因かもしれない。それに加えてまずは頭から当たる力士であり、最初から変化する考えは全く持っていない。だからこそごくたまに見せる立ち合い変化が鮮やかに決まる。そういった姿勢も負け越さなかった理由と言える。

続く