2025年5月場所個別評価 佐田の海

 今場所は西前頭13枚目だったが10勝5敗の好成績で3度目の敢闘賞を受賞した。また三賞も二桁勝利も3年ぶりとなった。そして38歳と14日は名寄岩を6日上回り、史上4番目の高齢での三賞受賞である。

 序盤は1勝2敗だったが4日目からは4連勝し、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦も白星を伸ばし、12日目に勝ち越しを決めると14日目は琴勝峰を上手投げで破り、10勝目となった。

 まず三賞に関しては最初は千秋楽の安青錦ー佐田の海の勝者が受賞だったみたいだ。しかし一部委員から「38歳でケレン味が全くなく、常に真っ向勝負。稽古場を含めた真面目な姿勢をたたえたい」と佐田の海の無条件での受賞を推薦した。そして採決では12票の過半数で当選し、受賞が決まった。このように三賞は土俵上の活躍だけで決まるものではない。稽古場での姿勢も評価されたということで個人的には素晴らしい判断だったと思っている。

 内容に関しては前廻し狙いの相撲が多かったが四つに組んでの前に出る相撲で白星を挙げていた。2日目の竜電戦は当たってすぐに右前廻しを取り、左下手も取ったが体格で上回る竜電に両廻しを取られ、やや勝手が悪くなった。しかし右から絞りながら前に出ると最後は寄り倒した。珍しくと言っては本人に失礼だが、力強い相撲内容だった。7日目の錦木戦は押し合いから右を差されて前に出られたが土俵際で右を抱えて網打ちにいき、反り返って錦木を土俵の外にかわした。最近はあまり観なくなったが元々は土俵際での粘りが持ち味の力士であり、本領発揮といったところである。12日目の明生戦は押し合いの攻防から明生が機を見て左を差し、右上手を取った。しかしそれと同時に左から掬って体を入れ替えるとそのまま寄り切った。動きを止められないあたりが好調ぶりを物語っている。そして13日目の金峰山戦は突き起こされたものの左に回り込んで右四つに組んだ。ただ金峰山も右四つで相撲が取れ、体が大きいので不利な体勢に見えた。しかし金峰山の寄りをこらえると左上手を切り、頭を付けて前に出て寄り切った。取組後は「廻しを切って頭を付ける。若い頃は師匠に言われたことが全然できなかったけど、何年かしてちょっとずつできるようになった」と語っていた。相撲の取り口の幅が広がったことが幕内で長く土俵を務めている要因の一つと言えそうだ。

 来場所は番付を上げるが再度の勝ち越しを期待したい。また来場所勝ち越せば上位力士と対戦する位置となり、新三役の可能性が出てくる。ここまでの頑張りは評価したいが、幕内で土俵を務めている限りにおいては三役を目指して欲しい。また同部屋の若手の平戸海が伸び悩み気味であり、平戸海に代わって存在感を示したい。