2025年5月場所を振り返って 優勝争い 13日目 大の里ー琴櫻戦

 13日目。大の里は琴櫻戦だった。過去の対戦成績は4勝4敗の五分だが、直近は大の里が連勝している。大の里は優勝が懸かる一番だが残り3日あり、独走状態ということでプレッシャーが掛かる局面ではない。目の前の一番に集中といったところである。一方の琴櫻は前日に勝ち越しを決めており、星勘定を気にせずに思い切りぶつかれる。また同じ二所一門であり、簡単には負けられない。

 相撲は両者体当たりから琴櫻の右のど輪に大の里が僅かながら後退したように見えた。しかし大の里の最大の持ち味は二の矢の当たりの鋭さである。右を固めてぶつかると琴櫻の左おっつけを跳ね上げ、右をねじ込んだ。そして左は持ち上げるようにしておっつけると一気に寄り切り、優勝を決めると同時に横綱も手繰り寄せた。

 元大関栃東の玉ノ井親方が語っていたように、二人の勢いの差がはっきりと出た一番だった。大の里は学習能力が高く、同じ失敗を繰り返さない。また今までは稽古量が少なかったが稽古量が増えたということで、そういった部分での伸びしろもありそうである。あとは以前の白鵬同様、自分自身との戦いということになりそうだ。

 一方負けた琴櫻は取組後は無言でうつむき、「すみません」と絞り出しただけだった。現実を見せつけられ、悔しいのは容易に想像がつく。しかしこういった時にじたばたするのは逆効果である。流れ的にはここからしばらくは豊昇龍と大の里の時代が続くと思われる。よって私としては気持ちを切り替え、一からやり直すしかないと思っている。年下の二人が横綱になったのは悔しいかもしれないが、悔しいと思ったところで何も始まらない。あくまで二人は二人である。以前でいえばモンゴル出身力士に相次いで先を越されたものの、横綱に昇進した稀勢の里の例もある。また祖父の琴櫻も同様である。何も悲観することはない。人は人、自分は自分と割り切り、引き続き相撲道に精進して欲しい。

続く