これぞ理想の横綱! 照ノ富士 極める相撲

 「極める」相撲は照ノ富士の代名詞でもある。機を見て相手を抱え込んだり、または当たってすぐに抱えて動きを止めていた。そして幕内の決まりて別に見ると極め出しで12勝を挙げており、寄り切り、押し出し、上手投げに次いで4番目に多い。序二段陥落前までは8勝、復帰後は14勝であり、どちらでも使われている。

 「極める」というと相手の肘を痛めつけるというイメージがあり、実際には多くの力士が痛がる素振りを見せている。しかし照ノ富士の「極める」は違った。相手を動かなくすることが大事であり、肘よりもちょっと先(指先の方)を極めた方がいいと語っていた。本人によると「ロックする」という感じらしい。確かに言われてみれば、照ノ富士に極められても、相撲の後痛がる素振りをする力士は少なかった。いかに研究していたかが分かるコメントである。

 また同じ極めるにしても、怪我をする前までは反り返ったまま前に出ることが多かった。しかし復帰後はアゴを引き、前傾姿勢で前に出ることが増えた。一見すると前傾姿勢の方が良さそうに見えるが、本人によると「自分の体に合っていると思ったから」のようである。また怪我をする前の相撲も「自分に合った相撲」だったという。確かに体が大きい上に上体の力が強く、怪我をする前まではセオリー無視の「規格外」の取り口が合っていた。しかし怪我をした後に後ろに反り返って出る相撲では、膝への負担が大きすぎる。それではどんな相撲を取ればいいのか?。様々な相撲の動画を何度も繰り返し見たようである。また「ネットで見られる相撲の動画は全部見たと思う」と言い切るほど徹底したものだった。そして師匠や周囲のアドバイスも参考に仮説を立て、稽古土俵で確かめると同時に試行錯誤を重ねた。こうして新たな相撲を磨き、横綱まで上り詰めた。

続く