2021年9月場所個別評価 阿武咲

 今場所は10勝5敗という成績だった。3連勝スタートとなり、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦も連勝し、10日目に勝ち越しを決めた。11日目からは上位力士との対戦となったが12日目は御嶽海を、そして13日目は正代を破り、見せ場を作ると同時に優勝争いに加わった。しかし14日目は明生の立ち合いの注文相撲にハマって4敗となり、優勝争いから脱落した。そして千秋楽の玉鷲戦は勝てば敢闘賞受賞だったが突き出しで敗れ、三賞受賞は成らなかった。

 内容に関しては突き押しの速攻相撲に安定感があった。また10日目に勝ち越しを決めており、この地位では力が一枚上である。特に良かったのが6日目の翔猿戦である。突き離しにはいかず、左からの強烈なおっつけで相手を横に向かせ、送り出した。そして11日目からの上位戦では13日目に正代を破った一番が光る。立ち合いは正代の圧力に後退し、右を差されかけたが体勢を立て直して逆に左を差し、一気に寄り切った。身長は176センチと高くないが、スピードがあるので相手の懐に入れば身長の低さが逆に武器となる。また御嶽海にも勝っており、上位力士を2人倒したのは評価したい。

 三役から陥落して4年近くが経つが、一時期の不調からは脱してきている。また今年は平幕上位で勝ち越した場所もあり、相撲内容的にも三役復帰が目前といったところである。できれば立ち合いの当たりをもう少し強くしたい。それができれば三役復帰だけでなく、三役定着も期待できる。いずれにしても復調気配は明らかであり、この先が楽しみである。

 11月場所は東前頭2枚目となったが勿論勝ち越しての三役復帰が目標である。そして今場所と違い、序盤から上位力士との対戦が続くので1人でも多く倒し、存在感を示したい。場所前の合同稽古も皆勤しており、体調は良さそうだ。また今場所は対戦がなかったが照ノ富士戦は過去の対戦成績は4勝2敗とリードしており、横綱撃破も期待したい。