2021年9月場所個別評価 大栄翔

 今場所は10勝5敗の好成績で4度目の殊勲賞を受賞した。前半戦は5勝3敗で折り返した。そして9日目に新横綱の照ノ富士に初黒星を付ける殊勲の星を挙げた。その後は連敗するも12日目からは連勝し、優勝した今年1月場所以来となる2桁勝利となった。

 内容に関しては突き押し相撲に安定感があったが、やはり9日目に照ノ富士を破った相撲が光る。相撲は立ち合いから照ノ富士に下がりを取られるも大栄翔は右からおっつけ、左前廻しは許さない。そして逆に大栄翔が右から跳ね上げ、下がりを切ると左ののど輪が入り、照ノ富士が棒立ちとなると最後は二本差して寄り切った。確かに右からのおっつけも素晴らしかったが、やはり左からののど輪で照ノ富士の上体を起こしたのが勝因である。そしてのど輪押しこそが大栄翔の最大の武器である。

 その一方で相手にのど輪押しを警戒され、力を出させない相撲を取られているのが原因だと思うが、優勝した1月場所よりも腰が引けた感じになっているのが少し気になる。おそらく相手の引き技を警戒してだと思うが、一気の攻めが少なくなっている。そして相撲が小さくまとまっている感じがする。大栄翔にはこういう時だからこそのど輪押しを磨き、相手を圧倒するような相撲を取って欲しい。確かに今場所照ノ富士を破ったのは立派だが、今のままでは三役と平幕を行ったり来たりのままで終わってしまう。もう一度原点に立ち帰り、のど輪押しで相手を一気に後退させるような相撲を期待したい。またそのような迫力のある相撲が取れなければ大関昇進は望めない。

 11月場所は東前頭筆頭という番付となったが、当然ながら勝ち越しての三役復帰を期待したい。そして初優勝した今年1月場所も西前頭筆頭であり、初日から上位力士を相次いで破り、勢いに乗った。地力はあるので白星を重ねていけば再度の平幕優勝の可能性も十分ある。またそれくらいの強い気持ちをもって土俵に上がって欲しい。今後に向けて試金石となりそうだ。