2021年9月場所個別評価 豊昇龍

 自己最高位であり、新三役を目指す場所となったが5勝8敗2休という成績に終わった。初日は正代を破り、これで対正代戦は3連勝となった。しかし2日目からは3連敗。そして5日目から急性扁桃炎で途中休場した。その後8日目から再出場するも結局5勝で場所を終えた。

 まずは9日目の若隆景戦に触れたい。立ち合いから押し込まれ、俵に詰まったが網打ちで残した。そして今度は後ろに付かれたところで右手を取っての一本背負いが奇麗に決まった。柔道でいう「一本」である。もっと言えば右手を取ると同時に二丁投げにいっており、柔道でいえば一本背負いと払い腰の合わせ技である。物言いがついたが、あまりに豪快に決まったので協議中の審判が笑っていたくらいである。改めて豊昇龍の身体能力の高さと足技の引き出しの多さには驚くばかりである。間違いなく今場所最高の一番だったと言える。そして後々語り継がれる取組となりそうだ。

 前半の上位戦に関しては正代戦は相手の圧力に後退するも右が入り、左も入ったところで一気に寄り切った。照ノ富士戦はすぐに左上手を与えてしまった点が物足りない。また2日目からは連敗したが上位力士相手に立ち合い負けはしておらず、経験の差で負けたという印象である。経験さえ積めば三役は近そうである。

 残念だったのは5日目からの休場である。扁桃炎でのどを痛め、食事が摂れなかったのが原因だと思うが、体重が7キロ減ったようである。これは軽量力士にとっては致命的である。再出場後は押し込まれる相撲内容が多かった。

 11月場所は西前頭5枚目となった。上位力士と対戦するかは微妙だが巻き返しを期待したい。今場所は負け越したものの、上位力士相手に全く通用していない訳ではなく、悲観すことはない。あとは稽古と本場所の土俵で力を付ければ自ずと番付は上がっていくと思うので今後に期待したい。