2021年9月場所個別評価 明生

 新関脇の場所だったが8勝7敗で勝ち越した。前半戦は3勝5敗と黒星が先行した。そして後半戦も黒星が増え、11日目終了時点で7敗となり、勝ち越しに向け後がなくなった。しかし12日目は照ノ富士を下手投げで破り、対横綱戦初勝利を挙げるとその後も連勝し、千秋楽に勝ち越しを決めた。

 内容に関しては立ち合いのぶちかましはあるものの、二の矢の攻めはなく、劣勢になるといった相撲が多かった。その部分を横への動きの速さでカバーするといった感じだった。やはり当たりの強さに関しては上位に入ると少し見劣りする点は否めない。星勘定的にも前半戦は役力士との対戦が少なかった中で3勝5敗というのは物足りなさが残る。

 一方照ノ富士に勝てたのは本人にとっては非常に大きかったと思う。対横綱戦初勝利と同時に対照ノ富士戦初勝利でもあった。確かに照ノ富士の膝の状態が良くなく、立ち合いの踏み込みがなかったのは事実だが、それでも右を深く差しての速攻相撲であり、持ち味を発揮できたのは間違いない。

 また終盤の2日間はいずれも引き技で勝ったが、私的には冷静に相手の動きを見透かしていた気がする。少なくとも自分の相撲だけを考えているようには見えなかった。特に千秋楽は勝ち越しが懸かっていた割には落ち着いていた。それも含めて実力である。終盤は4連勝で勝ち越しを決めたが、稽古量が十分でなければ終盤で連勝できる訳がない。同じく関脇で終盤に3連敗した御嶽海とは大違いである。

 来場所は2桁勝利を目指したいが、内容的にはもう少し前に出る圧力を増した上で横への動きを活かしたい。やはり左右に速く動けるのは明生の武器である。また身長180センチ、体重149キロと上位力士の中では体は大きくない方なので照ノ富士戦のように組み止められる前に自ら攻める相撲を取りたいところだ。