2025年3月場所個別評価 阿武剋

 今場所は西前頭12枚目だったが10勝5敗の好成績だった。4連勝スタートを切り、6日目までは5勝1敗だった。しかし7日目から3連敗し、黒星が増えた。10日目からは連勝し、12日目に勝ち越しを決めた。そして千秋楽は白熊に勝ち、幕内初の二桁勝利となった。

 内容に関しては四つに組み止める相撲で白星を挙げていた。右四つ得意だが左四つでも相撲が取れる。また組み止めれば高い確率で白星につなげられるタイプである。

 気になったのは3連敗した時の相撲内容である。組み止められたら勝てないと分かれば対戦相手は当然組ませない相撲を取ってくる。7日目の伯桜鵬戦は当たり負けし、二本差されると一気に寄り倒された。8日目の朝紅龍戦は当たってすぐに左を差されると一方的に攻められ、最後は押し出された。そして9日目の琴勝峰戦は突き合いから左前廻しを取った。しかし琴勝峰に右からおっつけられると上体が浮き、そのまま寄り切られた。共通するのは速い相撲で負けたということである。伯桜鵬戦は当たってからの攻めのスピード、朝紅龍戦は攻められた時の対応、そして琴勝峰戦は前廻しを取った後の攻めに課題を残した。また勝った相撲に関しても組み止めた後に勝つまで時間がかかっており、勝ち身の遅さも課題として挙げられる。地力があり、技量も持っているので幕内定着は問題ないが、上を目指すとなると課題が山積しているといった状況である。おそらく一場所や二場所で克服できる部分ではなく、地道に稽古を積み重ねていくしかなさそうだ。あとは幕内力士として見ればもう少し力強さが欲しい。

 来場所は自己最高位を更新し、前頭8枚目前後となりそうだ。課題がたくさんある中で番付が上がるのは能力がある証拠である。また一つ殻を破れば一気に強くなる可能性を秘めた力士である。少し時間がかかるかもしれないが、才能が開花する日を待ちたい。