2025年3月場所個別評価 高安

 今場所は東前頭4枚目だったが12勝3敗の好成績で3回目の技能賞を受賞した。前半戦は8日目は新横綱豊昇龍を押し倒し、2年半ぶりの金星を挙げた。また7勝1敗のトップタイで前半戦を折り返した。そして後半戦は2度単独先頭に立つもいずれも先頭に立った翌日に敗れた。千秋楽は勝って大の里との決定戦となったが送り出しで敗れ、悲願達成はならなかった。

 予兆はあった。本場所ではないが、1月場所後の「日本大相撲トーナメント・第49回大会」で5年ぶり3度目の優勝を果たした。過去は千代の富士、曙、朝青龍、白鵬(現宮城野親方)の4人が4回優勝しているが、4人に次ぐ数字である。そして4人は元横綱である。イベントとはいえ、3回優勝は地力の高さを証明している。

 その大相撲トーナメントの勢いをそのまま持ち込んだ印象がある。怪我もなく体調も良いということで8日目からは一横綱二大関を相次いで倒した。また怪我さえなければ地力は上位であり、技量は看板力士より上だと私は思っている。ベテランであり、経験を生かした相撲が取れる。

 その一方でやはり35歳ということで特に前半戦はさばいて勝つ相撲が多かった。個人的には白鵬の晩年の相撲に似ていると思った。やはり年齢が上がってきており、場所を通して前に出る相撲を取り続けるのは難しい。痛い黒星となった11日目の霧島戦と14日目の美ノ海戦はいずれも攻めきれず、反撃されての黒星だった。年齢的には仕方がない黒星とも言えるのだが、勝っていれば優勝争いの流れが変わっていただけに、勿体無かったのは否めない。

 逆に決定戦の黒星は私は仕方がなかったと思っている。若くて勢いのある大の里に開き直られてぶつかられた時点で勝ち目はなかった。そう考えるとやはり14日目に勝っていれば…と思ってしまう。あくまで結果論なのだが。

 場所後の春巡業は急性腰痛症で休場しているのが少し気になるが、途中参加を予定しているようだ。

 来場所は8場所ぶりの三役復帰が濃厚である。おそらく関脇と思われる。最近は怪我が多いので活躍できるかは何とも言えない。ただ優勝のチャンスはまた巡って来るはずである。そのための準備をして欲しい。手本にして欲しいのは先述の白鵬の晩年の相撲である。白鵬の相撲を見て自分なりに取り入れれば優勝争いの手助けになると私は考えている。またベテランなので白星を並べるのは至難の業である。負けることもある位の気持ちで相撲を取りたい。そうすれば霧島戦や美ノ海戦のように焦って前に出ることはなくなる。あとは優勝を目指すと同時に楽しんで相撲を取って欲しい。そして楽しむ中で悲願達成の日が来るのを待ちたい。