祖父の背中を追いかけて 琴ノ若 祖父の存在
琴ノ若を語るうえで欠かせないのが祖父である元横綱琴櫻の存在である。現役時代は強烈なぶちかましとのど輪押しで頂点に昇り詰めた。そして親方となり、師匠となってからは大関では琴風、琴欧洲、琴光喜、琴奨菊を育てるなど合計22人の関取を育成した。そして特筆すべきはそのスカウト力である。関取の数だけでなく、部屋の力士の数自体が他の部屋に比べて圧倒的に多かった記憶がある。当然ながら部屋の中での生存競争は激しく、稽古できない力士は土俵の外で四股を踏んだり、筋力トレーニングをしているような環境である。その中で生き残った者だけが関取に上がっていく。本場所の土俵の前に部屋での競争に勝たなければならない。また才能のある力士だけでなく、中には努力で関取の座を掴む力士がいるのもこの部屋の特徴である。琴櫻は確かに稽古自体は非常に厳しかったようだが、気配り上手で面倒見がよく、愛情も持っている親方だったというのが私の印象である。
そして琴櫻は入門前の琴ノ若に「大関になったら琴櫻をやる」と言っていたらしい。そして現在、大関と対戦できる番付まで上げてきた。大関が全くの夢という話ではなくなってきているのは確かである。また幼少期の相撲大会で初めてメダルを獲得した際、それが2位の選手に渡される銀メダルであったため、琴櫻から「1位じゃないと意味がない。金メダル獲ってこい」と突き放されたようだ。十両昇進時、本人はこれを忘れられない言葉として挙げている。父の初代琴ノ若によると祖父と琴ノ若の間に父が立ち入れなかった部分もあったらしく、おそらく人間として祖父と琴ノ若に相通じるものがあったのではないかと私は見ている。ただ琴ノ若は琴櫻の現役時代の映像はあまり観ていないようである。これまでのコメントを見ても父ではなく、祖父を意識したコメントの方が多い気がする。そして相撲ファンの私としても父ではなく、祖父を目指して頑張って欲しいと思う次第である。
続く
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