2024年11月場所個別評価 熱海富士
今場所は8勝7敗で勝ち越した。4連勝スタートも5日目からは6連敗し、黒星先行となった。6連敗のうち5敗は役力士であり、上位力士には通用しなかった印象である。ただ6日目の豊昇龍戦は勇み足での黒星だった。熱海富士の左足が出た時には豊昇龍の体がないようにも見え、私的には取り直しではなく、熱海富士の勝ちでも良かったのではないかと思える一番だった。11日目からは巻き返すと千秋楽は御嶽海を寄り切り、4場所ぶりの勝ち越しを決めた。
内容に関しては左四つに組み止める相撲で白星を挙げていた。本来なら勝った相撲を褒めたいところだが平幕上位に定着しており、地力があるのは分かっている。ということでどうしても負けた相撲の方に目が行ってしまう。気になったのは6日目の豊昇龍戦と9日目の霧島戦である。豊昇龍戦は押し合いから豊昇龍が右を差したところで左から抱え込み、動きを止めた。そして右のど輪で押しこむも豊昇龍が左からあてがい、左へ体を開いたことで熱海富士の左足が出た。そして霧島戦は当たってすぐに左上手を取り、右も差して十分な形を作った。しかし霧島に連続で下手投げを打たれて残されると体を入れ替えられ、押し出された。どちらも私としては物足りない内容なのだが、共通しているのはリーチの短さである。豊昇龍戦はリーチが長ければそのまま押し出せていたのではないか。そして霧島戦は右下手が取れていれば勝てたのではないかということである。結局不十分な体勢だったので逆転負けを許してしまった。確かに熱海富士は身長187センチ、体重189キロと立派な体格をしている。しかし部屋の横綱ほどリーチは長くない。よって横綱を手本とするのは得策ではないと私は見ている。ということで磨いて欲しいのは四つ相撲ではなく、押し相撲である。体型は押し相撲であり、おっつけもできるので右四つの相撲と併用で臨んで欲しいと思っている。今のままの取り口では上に上がれば壁にぶつかるのは目に見えており、組み止める相撲は私としては取って欲しくない。理想は11日目の正代戦のようなあおって寄る速攻相撲である。この内容ならリーチの長さを気にする必要がなくなる。
さて今年の熱海富士は三役を目前にしながら上がれないまま1年が終わってしまった。原因は本人だけでなく、横綱をはじめとして部屋で怪我人が続出し、申し合いも幕下力士相手となっている環境にもありそうだ。出稽古で力を付けるというのも一つの手かもしれない。
来場所は前頭2枚目あたりが予想され、上位総当たりの番付となる。改めて新三役を懸けての場所となるが、三役になるためには三役力士に勝たないことには始まらない。よって大関以上に三役との対戦は意識して臨みたい。この壁を乗り越えれば一気に台頭する可能性もあり、来年は飛躍の1年としたい。
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