2024年11月場所個別評価 若元春

 今場所は3場所ぶりの三役となったが10勝5敗という成績だった。前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は二大関には負けたものの終盤は連勝した。千秋楽は大栄翔を突き落としで破って白星を二桁に乗せ、大関昇進への起点を作った。

 内容に関しては押し出しで6番、押し倒しで1番勝っているように得意の左四つに組み止められず、押し相撲で対処していた。本人は不満のようだが、それだけ警戒されている証拠であり、私としては悪くないと思っている。また終盤は先場所は6連勝、そして今場所は4連勝で終えており、地力の高さを証明している。

 相撲に関しては3日目の宇良戦は宇良に左を差された上に頭を付けられ、やや勝手が悪い形となった。しかし宇良が居反りに来た瞬間、差していた左腕を抜きながら押し倒した。腕を抜くと同時に足も出しており、相撲の上手さを見せた。

 負けた相撲に関しては5日目の平戸海戦は一気に運ばれての完敗だった。大関に向けてはこういった内容は印象が悪くなるので極力なくしていきたい。そして三大関には勝てなかった。豊昇龍戦は左を差しにいったところを右から抱えられ、振り回されると一気に押し出された。大の里戦と琴櫻戦はいずれも差し手争いに敗れての完敗だった。琴櫻戦は先場所は勝っており、幕内での対戦成績も5勝9敗ということで勝てるチャンスはありそうである。問題は豊昇龍戦と大の里戦である。豊昇龍戦の幕内での対戦成績は2勝12敗と大きくリードされており、今場所を含めて8連敗中である。また大の里戦の幕内での対戦成績は1勝4敗であり、大の里の出足に圧倒されている印象が強い。今後に向けてもまずは出足を止めなければ勝機は見えてこない。よって琴櫻はまだしも、豊昇龍と大の里には今後も苦しめられそうだ。ただ上に上がるためには大関を倒す必要があり、稽古だけでなく研究することが求められる。

 来場所は4場所ぶりの関脇となりそうだが、大関昇進への足固めといきたい。また弟の若隆景が三役復帰となり、2年ぶりの兄弟同時三役となりそうだ。若隆景が来場所二桁勝利を挙げれば大関昇進への起点を作ることとなり、兄としても負けられない。そして兄弟による大関に向けた争いが激しくなりそうであり、相乗効果に期待したい。