2024年11月場所個別評価 琴櫻
今場所は14勝1敗のハイレベルな成績で初優勝を果たした。前半戦は3日目は王鵬に敗れて初黒星となったが翌日からは白星を並べ、前半戦は7勝1敗で折り返した。そして後半戦も白星を重ねると12日目終了時点で1敗が豊昇龍と2人となり、どちらかが優勝する可能性が高まった。13日目は勝てば優勝の目が出てくる隆の勝を上手投げで料理すると14日目は大の里に勝ち、1敗を守って千秋楽を迎えた。一方の豊昇龍も一歩も引かず、21年ぶりとなる大関による千秋楽相星決戦となった。相撲は押し合いの攻防から豊昇龍に右上手を取られた後振り回されたが右足で踏ん張って残すと叩くと同時に豊昇龍が足を滑らせたこともあり、バッタリと両手を付いた。少し意外な形ではあったが、初優勝を決めた。
内容に関しては場所を通して相撲に安定感があった。また前半から中盤にかけては危ない場面もあったが、11日目の若元春戦からは相撲内容が厳しくなり、調子を上げた印象がある。そして運もあるが、調子が上向いたことが優勝した要因と見ている。
唯一の黒星となった王鵬戦に関しては押し合いから一気に土俵際まで押し込んだが王鵬に左に回り込まれた。その後二本差して前に出たが王鵬に極められると寄り返され、その後は王鵬が振りほどくと押し相撲に防戦一方となった。最後は保田理に回り込もうとするも回り込めず、押し出された。これで対王鵬戦は連敗となった。
私は王鵬戦の黒星がそのまま綱取りに向けての課題だと思っている。この相撲に関していえば、当たって一気に押し出せていなければ、あるいは二本差したところで一気に寄り切れるくらいでなければ横綱にはなれない。同じ大関でいえば大の里は王鵬戦は3戦3勝であり、全く問題にしていない。出足が速いので王鵬が反撃できないまま終わっている。また豊昇龍は王鵬戦は2勝3敗と苦手としているが、今場所は押し合いから機を見て懐に入り、右前廻しを取ると一気に寄り切った。懐に入るスピードが速かったので王鵬は対応が全くできなかった。ということで王鵬戦を見れば大の里に比べれば出足で、そして豊昇龍に比べればスピードで見劣りしているのが分かる。よって2人と同じレベルに持って行くまでは厳しいと思うが、それに近いくらいのレベルに持って行く必要性を私としては感じる。今場所の14勝で満足せず、もう一段レベルの高い相撲を求めたい。あとは本人がそれを自覚しているかどうかである。
来場所は初めての綱取りとなるが、同じく綱取りの豊昇龍がおり、大の里の巻き返しも必至ということでハードルは高いと見ている。また今場所は右を差す相撲が多かったので来場所は対戦相手が右差しを封じてきそうである。よって先場所の大の里のように左の使い方がポイントとなりそうだ。今場所優勝したとはいえ、私的には豊昇龍や大の里の方が早く横綱に上がるという見立てである。
しかしである。やはり初優勝したことは本人にとって非常に大きい。そして自身が付いたはずである。また横綱に向けては優勝は一つのハードルであり、そのハードルを越えたことに意義がある。勿論来場所は綱取り場所なので頑張って欲しいのは言うまでもない。ただ個人的には来場所だけに集中して欲しくないという思いである。仮に綱取りに失敗したとしても優勝すれば再度チャンスが巡ってくる。それよりもまずは自分の相撲を磨き、力を付けた中で上に上がって欲しいというのが私の希望であり、願いである。
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