2021年3月場所個別評価 大栄翔

 今場所は8勝7敗で場所を終えた。初日から上位力士との対戦が続いたこともあり、4連敗スタートとなった。しかしその後は巻き返し、朝乃山、正代の2大関を連続で破った。結局2桁勝利には届かず、千秋楽に勝ち越して三役の座を維持するのが精一杯という結果に終わった。

 内容に関しては優勝した1月場所ほどの突き押しの威力はなかった。特に土俵際で叩き込まれた若隆景戦や立ち合いで四つに組み止められた霧馬山戦は内容的にも物足りない。それでも結果として勝ち越せたのは実力があってこそだと思う。また少し残念なのが2桁勝利を挙げられず、大関昇進に向けてという点で1月場所の優勝を活かせなかったことである。これで5月場所後の大関昇進の可能性は消えた。そして2桁勝利を挙げ、大関昇進への起点を作る必要がある。

 やはりポイントは初日の白鵬戦だったと思う。番付は関脇が予想されたが小結となった。番付的にも審判部が大栄翔を初日に白鵬にぶつけるために小結にしたのではないかと勘繰ってしまう。関脇では初日にぶつけるのは不可能である。それはさておき、結果論になってしまうが大栄翔には白鵬戦の重要性をもっと分かって欲しかった。速攻で一気に寄り倒されたが、取組後に花田虎上さんが指摘していたように大栄翔が取らなければいけない相撲である。確かに衰えは否めないが、ここ一番の集中力は白鵬のほうが一枚も二枚も上である。結局2日目以降は歯車が狂ってしまった。こうなると突き押し相撲は苦しくなる。仮に勝っていれば流れに一気に乗れる可能性が高かっただけに非常に痛い黒星だった。結果は変えられないので次に活かしていくしかない。

 来場所は再度小結となるが2桁勝利を挙げ、大関昇進への起点を作りたい。またそれと同時に関脇に番付を上げたい。小結だと初日から上位力士との対戦が続き、前半戦は劣勢を強いられてしまう。しかし関脇なら前半戦は平幕との対戦も多く、調子を上げながら後半戦は上位力士との対戦に臨むことができる。その意味では来場所関脇の隆の勝、高安には勝ちたいところだ。力は付けてきており、大関陣に割って入って優勝争いできる力はあると思うので1月場所のような活躍を期待したい。