2021年3月場所を振り返って 優勝争い その2

 14日目。高安は翔猿戦だったが翔猿の突き押しを凌ぎ、左四つに組み止めた。これで高安が勝ったかに見えた。翔猿は捨て身の右蹴返しを繰り出すと高安はこらえて一気に前に出た。しかし土俵際で翔猿が寄り倒されながら右に捻ると高安は左膝から崩れ落ちた。物言いが付いたが結局軍配通り翔猿の勝ちとなった。翔猿側から見れば右を首に巻いての蹴返しは思った以上に効いた。また土俵際の粘りは翔猿の真骨頂である。一方高安側から見れば攻め急ぎすぎである。その点では13日目の若隆景戦と同じである。また左四つに組んだ時点で吊るという選択肢もあったと思う。個人的には得意の左四つに組みながら勝てないというのが少し不満である。照ノ富士は朝乃山に勝ち、千秋楽を前に単独トップに立った。2桁勝利を挙げ、大関復帰を確実にしたが、それに満足せず白星を重ねるのはさすがである。

 そして千秋楽。照ノ富士は貴景勝戦が組まれたが勝てば優勝。負ければ貴景勝と4敗同士の高安と碧山の取組の勝者と合わせて3人による優勝決定巴戦となる。4敗同士の一番は勝った方が敢闘賞受賞となったが碧山が叩き込みで高安を破り、敢闘賞を受賞した。一方の高安は終盤3連敗し、結局10勝5敗に終わった。照ノ富士と貴景勝の一番は立ち合いで照ノ富士が貴景勝の右手を手繰ろうとしたが失敗。そして押し込まれるも照ノ富士は残し、左からおっつけると貴景勝の右からのとったりに乗じて体を寄せて押し出した。取組後に解説の舞の海さんが指摘していたが、今場所貴景勝は体重を17キロ減らしており、それが押し切れなかった原因ではないかと思う。それにしても立ち合いの作戦に失敗しながら最後はきっちり押し出すあたりは見事である。また対大関戦3連勝で場所を終えた。大関復帰に向けて文句のつけようのない成績、そして相撲内容である。また高安が終盤に連敗し、優勝のチャンスが転がり込んできたが、終盤に連勝できるのは実力があってこそである。横綱不在の中、現時点で一番強い力士が優勝したという意味では極めて順当な結果である。