2024年9月場所個別評価 宝富士
今場所は10勝5敗の好成績だった。2日目から4連勝したが5日目からは3連敗し、前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦は9日目は欧勝馬に勝ち、連敗を止めるとその後は白星を重ねた。12日目は十両の獅司を寄り倒しで破って勝ち越しを決めた。また141年続いている青森県出身の幕内力士の記録が継続となった。そして千秋楽は遠藤を押し出し、8年ぶりの二桁勝利となった。
内容に関しては左四つに組み止める相撲には安定感があった。また伸び盛りの若手の阿武剋、北の若、狼雅、獅司に勝っており、健在ぶりを見せていた。好内容だったのは9日目の欧勝馬戦と12日目の獅司戦である。欧勝馬戦は欧勝馬が突き立てるのを宝富士が左へ回り込み、欧勝馬が左のど輪で押し込んだところで機を見て右腕を引っ張って逆とったりにいき、すっぽ抜いて欧勝馬を倒した。軍配は欧勝馬に上がったが物言いが付き、欧勝馬の右肘が付くのが早く、差し違いで宝富士の勝ちとなった。宝富士にしては珍しくと言っては失礼だが、執念で際どい一番を制した。また3連敗中であり、これを拾えたのはかなり大きいと語っていた。獅司戦は獅司が徹底して左からおっつけ、左がなかなか差せなかった。しかし獅司の攻めを凌ぐと右からおっつけながら左を差し、最後は右上手を取って寄り倒した。場所前は満足に稽古ができなかったようだが、これだけの動きができるということは、やはり過去の稽古量の貯金があるからだと思う。同部屋の錦富士は土俵下で取組を見ており、刺激を受けてめちゃくちゃ気合いが入ったと語っていた。それ位何としても勝つという気持ちが伝わってきた。素晴らしい内容だった。
また青森県出身ということに関しては同部屋で同郷の錦富士、尊富士と話しているようである。ただ錦富士は今場所は幕尻で千秋楽でようやく勝ち越しであり、尊富士は実績はあるものの両膝に爆弾を抱えており、宝富士にかかる期待は大きい。本人は負けたら仕方がないと話しているが、今後宝富士が十両に落ちれば141年続いてきた記録が途切れる可能性もあると見ている。できれば宝富士以外の力士が記録を守って欲しいところだが…。
11月場所は二桁勝利を挙げたということで大幅に番付が上がりそうだ。しかし本人が語っているように大負けする可能性もあり、気は抜けない。また腰椎椎間板ヘルニアで秋巡業を休場しているのが気掛かりである。治療に専念し、できるだけ回復させてから場所に備えたい。それでも地力と技量も持っている力士であり、簡単に幕内の座を明け渡すような力士ではないはずなので活躍を期待したい。
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