2021年1月場所個別評価 阿武咲

 今場所は9勝6敗で勝ち越した。また久々となる平幕上位での勝ち越しとなった。前半戦は役力士との対戦が続いたが3連勝スタートし、5勝3敗で折り返した。そして後半戦は勝ったり負けたりという星勘定となったが13日目に勝ち越しを決めた。

 内容に関しては相手の懐に入っての速攻相撲が光った。特に良かったのが2日目の照ノ富士戦と6日目の貴景勝戦である。照ノ富士戦はぶちかましてから突き放し、照ノ富士が右からおっつけるも低い重心からモロ差しとなり、一気に寄り切った。身長176センチと背が低く、重心も低い。そして長身の照ノ富士がおっつけても重心の高さが違うのでおっつけが効かない。背の低さを活かした見事な相撲だった。6日目の貴景勝戦は相手の突き押しを受け止め、引いたところを一気に押し出した。また貴景勝戦は3年ぶりの勝利となった。中学時代からのライバルだが貴景勝は大関へ駆け上がり、差が大きく開いていった。貴景勝が本調子でなかったのは確かである。しかし阿武咲にとっては貴景勝に勝ったことは非常に大きい。これを弾みに再び上を目指したい。

 3月場所の番付は西筆頭となった。おそらく両横綱が復帰してくると思うので初日から今場所以上に厳しい戦いとなりそうだ。その中で前半戦に何番勝てるかがポイントである。また三役復帰を目指したいが、関脇・小結は2場所続けて4人全員勝ち越しており、復帰への道は容易ではない。当然だが関脇・小結には全員に勝つくらいの気持ちで臨んでほしい。それでも復調気配は確かである。何とか層の厚い三役陣の間に割って入りたいところだ。番付が違うだけで力の差はないと思うので勝ち越しての三役復帰を期待したい。