2021年1月場所個別評価 宝富士

 今場所は9勝6敗だった。前半戦は上位力士との対戦が続いたが2大関破ったこともあり、4勝4敗で折り返した。そして後半戦は9日目に全勝の大栄翔に土を付けるなど白星を伸ばし、13日目に勝ち越しを決めた。しかし千秋楽は敗れ、2桁勝利とはいかなかった。

 内容に関しては左半身の守りの相撲で白星を挙げていた。左四つのスペシャリストだが周囲に知れ渡っており、なかなか得意の四つに組ませてもらえない。ということで今場所は左上手を取っての相撲が多かった。4日目の貴景勝戦は右手を手繰り、左上手を取ってからの投げで貴景勝を転がした。6日目の朝乃山戦は差し手争いに負けたものの左上手からの攻めでバランスを崩し、最後は上手投げで仕留めた。確かに2大関ともに本調子ではなかったが、少しでも調子を落とせば力の差がないのを証明するような相撲だった。9日目の大栄翔戦は突き押しに応戦し、相手が出てきたところを左に体を開いての叩き込みで大栄翔の連勝を止め、優勝争いを面白くした。2月で34歳になったが、最近は左上手を取っての相撲や土俵際の突き落としや投げに活路を見出しており、衰えは全く見られない。また出稽古禁止の中、同部屋の照ノ富士との稽古で成果を挙げているとも言えそうだ。照ノ富士も大関復帰を目前としており、相乗効果と言っていいと思う。

 3月場所は勝ち越しての4年ぶりの三役を期待したい。動きの速さでは少し劣るので左半身での守りの相撲で相手の攻めを凌ぎ、そこから自分有利の形に持ち込みたい。相手は左四つに組み止められるのが嫌なので付け入る隙は十分ある。番付は東筆頭なのでまずは勝ち越したいところだ。厳しい番付だが初日から上位力士を倒す活躍を期待したい。