2021年1月場所個別評価 大栄翔

 今場所は13勝2敗の好成績で初優勝を果たすと同時に殊勲賞と技能賞を受賞した。西筆頭ということで初日から上位力士と対戦する厳しい番付である。しかし初日からの大関戦で3連勝すると4日目からは関脇、小結を破り、三役力士を総なめにした。そして8日目は輝に勝ち、自身初となる中日勝ち越しを決めた。1敗力士はおらず、星2つ差で後半戦を迎えた。しかし9日目は宝富士に、そして11日目は阿武咲に敗れて2敗となり、この時点で正代に並ばれた。それでもその後は踏ん張り、2敗を守った。一方の正代は14日目に照ノ富士に敗れたので再び単独先頭に立った。そして千秋楽は一方的な相撲で隠岐の海を突き出し、悲願の初優勝を決めた。

 内容に関してはのど輪押しを交えた突き押し相撲が光った。また去年10月に右ひじの遊離軟骨除去手術を受けたが、それがプラスに働いたと私は思っている。11月場所は右ひじを気にする場面もあったが今場所は痛みも取れ、実力を存分に発揮した。役力士を全て破ったことには少し驚いたが上位力士を倒せる力があるのは分かっていたので意外だとは思わない。また実力がなければ役力士相手に初日から7連勝できる訳がない。結果論だが前半戦で星2つ差でリードした時点で勝負あったという感じである。それでもやはり12日目に明生に勝った一番は大きかった。いなされて右上手を取られ、ピンチだったが左から突き落とし、回り込んだ。物言いが付いたが大栄翔が飛び出すより僅かに早く明生の左ひじが先に付いており、軍配通り大栄翔の勝ちとなった。土俵際で粘るタイプの力士ではないのでやはり神懸かっていたと言える。

 それにしても入幕したばかりの頃は一部で注目されていたが、当時は突き押しの威力はあるものの、少しいなされると体が泳ぐといった感じで物足りなく映っていた。しかし少しずつではあるが突き押しの威力が増し、相手の引き技にも対応できるようになってきた。着実に力を付けてきているのが分かるので応援したくなるタイプの力士である。今場所の優勝に満足せず、更に上を目指してほしいところだ。

 3月場所は小結となったが2桁勝利を挙げられるかが焦点となりそうだ。2桁勝てば5月場所での大関獲りの可能性が高くなる。伸び盛り、27歳という年齢、部屋に関取が多い稽古環境を考えると今が大関昇進のチャンスである。おそらく3月場所後は照ノ富士が大関に復帰する可能性が高いので照ノ富士に続きたい。一方でチャンスを逃すと隆の勝、高安、御嶽海などの実力者も控えているので厳しくなってくる。できれば勢いをそのままに大関昇進といきたいところだ。その部分で注目していきたい。