逃げない相撲を取る男! 大栄翔 大関獲りを逃した2023年7月場所 その1

 思うような成績を残せなかった場所だが、私としてはこの場所を抜きにしては語れないと考え、敢えて取り上げた。2場所前の2023年3月場所は12勝をマークした。そして5月場所は10勝だったので大関獲りの場所だった。7月場所は一人横綱の照ノ富士と大関貴景勝が初日から休場した。よって上位力士は新大関霧島一人という状況になった。また協会幹部も看板力士の不足に危機感を抱いており、佐渡ヶ嶽審判部長は豊昇龍、若元春とともに7月場所が大関獲りの場所となると明言した。そして9月場所は最大5大関体制となっても歓迎する方針を示した。結果として二人が同時に大関に昇進することはあっても、場所前にこのような形で明言することは滅多にない。ということでいつもの大関獲りよりは少しだけハードルが下がることは容易に想像できた。よって大栄翔に限らず、豊昇龍、若元春にとってもまたとないチャンスだった。

 この場所は10日目に勝ち越しを決めたところまでは良かった。しかし翌日からは3連敗し、13日目終了時点で「直近3場所33勝」が不可能となった。また14日目は注文相撲で阿武咲に勝ったが、この内容に八角理事長が激怒するなど、印象が更に悪くなった。結局千秋楽は黒星で9勝に終わったことで、大関獲りは事実上白紙となった。また7月場所後の夏巡業中に、13日目の若元春戦で叩き込みで敗れた際に、胸を強打して肋骨を骨折していたことを明かした。ただ一部では怪我の情報がネットで出回っており、14日目の注文相撲に理解を示す意見も見られた。それでも怪我を除けば大関獲りという立場では最悪のタイミングだったのは間違いない。

続く