2024年7月場所個別評価 伯桜鵬 

 今場所は東十両13枚目だったが11勝4敗の好成績だった。前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は12日目に勝ち越しを決めると終盤は白星を並べた。千秋楽は獅司に勝ち、決定戦進出の可能性を残した。しかし十両結びの一番で2敗の白熊が勝ったため、決定戦進出とはいかなかった。

 内容以前に驚いたのが突き・押しの相撲に徹することを決めたようである。組んで良し、離れて良しのタイプだが、伊勢ヶ浜部屋に転籍したことで心境の変化があったようだ。部屋には横綱に加えて左四つのスペシャリストのベテラン宝富士がおり、2人を見て技量では歯が立たないと思ったのかもしれない。確かに今までの相撲でも十両では勝てると思う。しかし身長181センチ、体重160キロの体格は平幕上位に入れば決して大きい方とは言えない。先のことを考えれば四つ相撲より押し相撲を磨いた方が近道のように思える。年齢はまだ21歳になったばかりであり、先を見据えて技量を磨いていきたい。

 ということで内容に関しては当たって押す相撲がほとんどだった。そして組まれたらそれなりに対応するといった内容だった。負けた相撲は突き放そうとしたものの、あっさり組み止められる内容が多かった。その部分ではまだまだである。押し相撲の型を作り、その精度を高めていきたい。

 それでも関取の中ではずば抜けた相撲センスを持っているのは確かである。凄かったのはやはり千秋楽の獅司戦である。当たってすぐに獅司に右前廻しを取られ、苦しい体勢となった。しかし右上手を取ると右へ回り込み、寄り詰められたところでかかとを俵に乗せ、左へのうっちゃりが奇麗に決まった。褒められた内容ではないが、流れの中ではなく、シナリオを作った上で大技を決めたあたりは流石としか言いようがない。

 9月場所は西十両5枚目となったが、二桁勝利を挙げての幕内復帰が望まれる。新たな環境で大変だとは思うが、厳しい師匠の下で意識の高い力士が稽古に励んでいるというイメージであり、これ以上は望めないという環境でもある。あとは横綱が言っていたように、本人がどう考えるかという問題である。ひょっとしたら本場所ではなく、部屋での稽古で強くなることの方が大事なのかもしれない。期待の力士であり、厳しい稽古で揉まれながら強くなっていって欲しい。