2021年1月場所を振り返って 優勝争い その2

 普通に考えれば実績のある大栄翔が有利である。星2つの差はやはり大きい。また7日目までで役力士との対戦は終えており、後半戦は平幕力士との対戦である。しかし私は大栄翔が断然有利、とまでは考えていなかった。なぜなら大栄翔は三役で2桁勝利を挙げた実績があるが、上位力士に強い一方、平幕力士に負けるタイプの力士だからである。少なくともこのまますんなりとはいかないと思っていた。当然だが対戦相手も手段を選ばず負かしに来る。そして大栄翔は9日目は宝富士に、11日目は阿武咲に敗れて2敗となり、11日目終了時点で2敗で正代と大栄翔が並び、3敗で朝乃山と明生が追いかける展開となった。

 こうなってくるとやはり大関ということで正代に注目が集まる。しかし正代は結果として白星を重ねているだけであり、お世辞にも安定感のある内容とは言えなかった。特に11日目の隠岐の海戦は取り直しとなったが、どちらも内容は隠岐の海の方が攻めており、ラッキーとしか言いようがない白星だった。ただ正代は大関なので終盤に上位力士との対戦を残している。12日目、13日目は何とか踏ん張った。しかし14日目の照ノ富士戦は右四つの有利な体勢を作りながら攻めきれず、最後は照ノ富士に押し込まれると間隔が開いたところを叩き込まれ、前に落ちた。これで正代は3敗となり、優勝争いから一歩後退した。それと同時に直接対決は終わっており、致命的な1敗となった。

 一方の大栄翔は平幕が相手とはいえ、12日目からはよく踏ん張った。そして自分の相撲を取って2敗を守った。また番付的に大栄翔のほうが先に相撲を取るので特に14日目は大栄翔が勝ったことで正代にかかるプレッシャーは大きかったはずである。結局正代はプレッシャーに勝てず、照ノ富士に負けた時点でほぼ勝負ありだった。

続く