2024年7月場所個別評価 大の里

 今場所は優勝すれば大関昇進の可能性もあったが9勝6敗という成績に終わった。それでも11日目は全勝で突っ走っていた照ノ富士に初黒星を付けたことが評価され、2場所連続2度目の殊勲賞を受賞した。また新入幕から4場所連続三賞受賞は史上初の快挙となった。  

 初日は御嶽海、そして2日目は若元春に敗れ、まさかの連敗スタートとなった。3日目は初白星を挙げるも4日目は平戸海に敗れて1勝3敗となり、苦しい序盤戦となった。しかし翌日からは連勝し、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は9日目は豪ノ山に押し出されて4敗となり、場所後の大関昇進はほぼ絶望となった。しかし11日目は照ノ富士を左からの突き落としで破り、存在感を見せた。千秋楽は二桁勝利を懸けての隆の勝戦だったが一方的に押し出された。それでも9勝ということで9月場所後の大関昇進に望みをつないだ。

 内容に関しては自分の相撲、というよりも対戦相手の徹底した右差し封じに苦しめられた。当然である。ライバルから見れば、入幕4場所目の力士に簡単に大関に上がられてはたまったものではない。特に初日の御嶽海戦は成す術なく一方的な内容で押し出され、この時点で苦戦することは想像できた。本来なら師匠の二所ノ関親方が言うように相手の上をいく相撲を取る必要があるが、そう簡単なことではない。

 ただその後は気持ちを切り替え、構わず前に出る相撲で巻き返した。そして11日目の横綱戦である。当たって右を差したものの、前に出る考えは全くなかった。左は巻き替えるような動きを見せると照ノ富士が前に出てきたところを左へ体を開いての突き落としが見事に決まった。前に出る相撲ではなかったものの、横綱をわなにはめたような相撲内容であり、見事としか言いようがない。しかも連敗中であり、繰り返しになるが、気持ちの切り替えができていた証拠である。やはり大物であることは確かである。

 9月場所は改めて大関獲りの場所となるが、今場所も三賞を受賞しているだけにマークがきつくなりそうである。そういった状況でどういう相撲を取るか注目したい。またこれは本人ではなく、審判部の人に言いたいが、9月場所後の大関昇進に関しては厳しく見て欲しい。ハイレベルな成績なら文句なしだが、そうでない場合は見送って欲しいと私としては考えている。なぜなら大関は協会の看板であり、特権階級でもあるからである。元々が横綱候補でもあり、一場所くらいは厳しく見て、成長を促すのが後々の本人のためにもなるはずである。あとは巡業で相撲を取るスタミナをつけて欲しい。上に上がれば長い相撲を取ることも時に求められる。上に上がってからではなく、今のうちから体力強化に励みたい。