2024年7月場所個別評価 貴景勝

 今場所は9度目のカド番となったが5勝10敗と負け越し、5年、30場所務めてきた大関から陥落することになった。黒星スタートとなり、7日目までで2勝5敗と苦しい星勘定となった。8日目からは連勝し、巻き返しの兆しはあったが13日目は照ノ富士に叩き込みで敗れ、陥落が決定した。

 内容に関しては相手を押し込めず、苦しい土俵となった。首の痛みもあるだろうが、3場所連続で途中休場しており、15日間相撲を取り切るスタミナがなかったことが原因と見ている。おそらくこのあたりは周囲の人よりも、相撲を取っている本人が一番よく分かっているはずである。結果はついて来なかったが、言い訳を一切しなかったのは立派だったと言える。

 相撲に関して印象に残ったのが3日目の熱海富士戦と10日目の阿炎戦である。熱海富士戦は突き起こしてから左にいなし、押し込んだものの熱海富士に左に回り込まれた後左を差され、最後は左上手を取られて寄り倒された。私が感じたのは貴景勝が左にいなした後の攻めである。本来なら頭からぶちかましてそのまま押し出すところである。しかし首を痛めており、ぶちかましができなかったということだと思う。やはり本来の相撲ではない。阿炎戦は阿炎のモロ手突きをかいくぐり、一気に押し出して軍配を受けた。しかし物言いが付き、阿炎の左のかかとが俵の上で残っており、貴景勝の左手が付くのが早く、差し違いとなった。スロー映像を見ても阿炎の左かかとが僅かながら浮いていた。8日目から連勝しており、この一番に勝っていれば5勝5敗の五分の星となっていただけに、非常に痛い6敗目となった。内容は貴景勝が勝っており、阿炎の浮いたかかとを恨めしく思った人もいたかもしれない。

 9月場所は関脇となり、二桁勝てば大関に復帰できる。しかし夏巡業を休場しており、状況は厳しそうだ。私的には大関復帰というよりも、体調を整えてどこまで頑張れるかというところだと思っている。それまでも大関の座を守るための努力はしてきており、あとは気力の問題である。そして気力が衰えれば引退の可能性もあり、今後の動向に注目していきたい。