2024年7月場所個別評価 琴櫻

 今場所は10勝5敗という成績だった。初日は大栄翔に押し出され、二場所連続初日に大栄翔に黒星ということになった。5日目の御嶽海戦は投げの打ち合いとなった。物言いが付いたが琴櫻の体が先に落ちており、軍配通り御嶽海の勝ちとなり、2敗目となった。結局前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は10日目に大の里を上手投げで破り、勝ち越しを決めた。しかし翌日からは3連敗し、優勝争いから脱落した。千秋楽は照ノ富士に勝ち、7戦目にして対照ノ富士戦初白星となった。

 内容に関しては全体として腰高であり、それが原因で攻め込まれる相撲が多かった。10勝ということで二桁勝利を挙げており、大関としての役割は果たしている。しかし逆転で星を拾う相撲もあり、前に出て勝つ相撲が少なかったのも事実である。上を目指す大関として見れば物足りなさが残る。

 印象に残ったのが10日目の大の里戦である。大の里のかち上げに突き放して応戦した。そして押し合いの攻防の後、琴櫻が左上手を取った。その後右を差そうとするも自ら右の差し手を抜き、体を開いての左下手投げで仕留めた。先場所も左上手を取ったものの、その時は大の里に右を深く差され、体を寄せられて寄り切られていた。一言でいえば大の里が簡単に左上手を取られ、術中にはめたという内容だった。しかし今場所は自分のタイミングで左上手を取り、そのまま投げに行くのではなく、左を差しに行き、組み止めるふりをしてから投げを繰り出した。まさに先場所の借りを返したという内容であり、取組後は珍しく気合いの入った表情を見せていた。両者ともに横綱候補であり、今後も面白い駆け引きが見られそうである。

 少し気になったのが場所後の8月9日の巡業は土俵入りのみ参加し、10日の巡業は休場したことである。原因は腰痛であり、突発的ではなく、疲労の蓄積によるものと見られる。このニュースを聞き、私が思ったのは場所中も腰に痛みを抱えていたのではないかということである。もしそうであれば内容を見ても合点がいく。巡業は幕内力士が参加することは義務なのだが、あまり無理をしてほしくないところだ。

 ということで9月場所はまずはできるだけ体調を万全にして備えて欲しい。大関であり、稽古量をコントロールできる立場である。また今場所の相撲内容を見た限りでは、大関としての役割を果たしつつ、優勝を狙えれば狙うというスタンスで良さそうだ。大関昇進後3場所連続二桁勝利ということで地力があるのは確かである。しかし上に上がるまでは時間がかかりそうであり、大関とはいえ長い目で見ていきたい力士である。