2024年7月場所を振り返って 優勝争い 千秋楽 照ノ富士-琴櫻戦
そして結びの一番である。照ノ富士は琴櫻戦だった。幕内での対戦成績は横綱の6戦全勝であり、横綱が有利なのは確かである。しかし琴櫻は大関であり、力量的にはそろそろ横綱に勝つ可能性がある。また照ノ富士は前日は一方的な内容で負けており、フタを開けてみなければ分からない側面があった。そして前日は立ち合いで失敗しており、普通に左前廻し狙いで行くことは想像できた。問題は琴櫻の出方である。二本差し狙いの相撲が多いがのど輪押しも持っており、14日目の隆の勝のような攻めも十分考えられた。照ノ富士もそのことが頭にあったかもしれない。
相撲は照ノ富士が踏み込んで左前廻しを狙いに行った。一方琴櫻は両差し狙いであり、のど輪攻めではなかった。照ノ富士は肝心の左前廻しが取れない。一方琴櫻は二本差してじわじわと前に出た。そして照ノ富士が琴櫻の左を抱えて前に出たところを琴櫻は下がりながら左の差し手を抜き、左へ回り込んでの出し投げで横綱を土俵に這わせた。これで照ノ富士は3敗となり、隆の勝との優勝決定戦となった。
勝った琴櫻に関しては立ち合いは両差しを選択し、自分の相撲を貫いた。また優勝を逃した今年1月場所の優勝決定戦と同じ立ち合いをしたことに強い意志を感じた。ただその時の照ノ富士は立ち合いが厳しく、腰の位置も低かった。しかしこの日の横綱は腰が高く、膝に疲れが溜まっていた。その分だけ琴櫻が勝てたように見えた。それでも対横綱戦初勝利であり、今後の自信にしてほしい。そして今度は前に出る相撲での白星を期待したい。
一方負けた照ノ富士は前廻しが取れなかったことは立ち合いの踏み込みが弱かったことの裏返しである。相撲自体は悪くないものの、両膝に力が入らず、それが原因で琴櫻に転がされた。膝の状態を考えれば本割で決めたかったところである。しかし決められなかった。13日目にも優勝の可能性があったが終盤は連敗し、決定戦まで持ち込まれた。連敗の内容を見ても両膝の状態が良くないのは明らかであり、体力的な部分で追い詰められた印象である。よって決定戦に向けては相撲内容以上に精神力が問われることになった。
続く
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