琴恵光引退に関して 「しゃくる」とは何か? その1

 意味の前に「しゃくる」とは角界の中でも佐渡ヶ嶽部屋特有の技のようである。師匠の佐渡ヶ嶽親方は「私は入門した頃から先代に言われましたよ。『しゃくらんかい!』ってね」とコメントしていた。どうやら元横綱琴櫻の先代佐渡ヶ嶽親方の教えが受け継がれているようである。

 そして師匠によると「しゃくる」とは「差した時に、腕を突き上げるようにしながら、相手を揺さぶる動き」のようである。また腕を返すと同じ意味のように感じるが、師匠は「腕だけじゃなくて、体全体を使って揺さぶって相手の上体を起こすんです。相手の上手を遠くする効果があります」と答えた。相手の上手を遠くする動き、まさにこれが琴恵光が得意としていた「しゃくる」という技である。

 「しゃくる」をもっと具体的に言うと、自ら差し、相手が上手を取ろうとした瞬間に差し手を突き上げながら体全体で相手の体を揺さぶるような動きをして、自らの腰を落とすということである。

 そして自らしゃくる動きを実際に試してみた。相撲経験はゼロである。すると思った以上に動きが難しい。特に揺さぶった後に腰を落とす動きは、自ら強く意識して取り組まないと覚えられないはずである。ただ覚えれば強力な武器となることは理解できる。

続く