2024年5月場所個別評価 阿武剋

 今場所は東十両12枚目であり、新十両の場所だったが13勝2敗の好成績だった。4連勝スタートを切ったが5日目は風賢央との新十両対決に敗れ、初黒星となった。しかしその後は再び白星を並べ、9日目は千代丸を寄り切って早々と勝ち越しを決めた。そして13日目は遠藤との1敗対決を制し、優勝争いに残った。しかし14日目は若隆景との1敗対決だったが叩き込みで敗れて2敗目となり、新十両優勝は逃した。それでも優勝争いをしての13勝は立派であり、改めて実力の高さを示した。

 それでは阿武剋の紹介をしたい。阿武剋はモンゴル・オブス県出身で阿武松部屋所属であり、年齢は24歳である。また身長184センチ、体重160キロであり、右四つ・寄りを得意としている。15歳で来日して旭丘高校に入学し、相撲を始めた。そして高校卒業後は日体大に進学し、4年次に全国学生相撲選手権大会で優勝し、幕下15枚目格付出の資格を獲得した。その後2022年末から阿武松部屋で研修を開始した後2023年9月場所前に正式に入門した。そして翌11月場所で幕下15枚目格付出で初土俵を踏んだ。今場所幕内最高優勝を果たした大の里とは同じ日体大の同級生である。

 内容に関しては右四つに組み止める相撲には安定感があった。また左四つでも勝っており、左四つでも相撲が取れるみたいだ。2日目の紫雷戦はけんか四つの対戦となったが立ち合いからすぐに左上手を取って相手の動きを止めると差し手争いから最後は右前廻しを取り、腰を下ろして寄り切った。12日目の東白龍戦は東白龍の突っ張りといなしをこらえると最後は右へいなしてから送り出した。13日目の遠藤戦は突き合いから遠藤得意の左四つの体勢となり、苦しくなったかに見えた。しかし遠藤の方がなかなか攻められない。最後は遠藤の前に出てからの出し投げに乗じて浴びせ倒した。それだけの実力がある証拠である。14日目の若隆景戦は若隆景が前日の相撲を見て警戒したのだろう。結果として相撲を取らせてもらえなかった。優勝を逃したのは悔しいかもしれないが、相手に警戒心を植え付けたという点では今後に向けてはプラスに働きそうである。また全ての力を出し切っているようには見えず、今場所の結果は挨拶程度といった印象がある。

 7月場所は十両上位に番付を上げるが、おそらく二桁勝って9月場所は新入幕ということになりそうである。また5月30日に行われた相撲教習所の卒業式では証書とともに賞状も手にしており、学業も非常に優秀のようである。そして目標は鶴竜みたいだが、頭の良さも含めて非常によく似ている。大の里のような派手さはないものの実力を兼ね備えており、本領発揮は入幕後ということになりそうである。あとは立ち合いの当たりを強化し、押されない相撲を取ることが今後に向けての課題である。